紙の通帳はリアル店舗やATMの存在と密接に関わっています。銀行はコスト削減の必要性から、店舗やATMの数を急激に減らしており、最終的には通帳もなくすことで、店舗数を最小限にとどめようとしているのです(一方で各行はインターネット取引の手数料を据え置いています)。

 

近くの店舗に行って、お金を下ろして買い物などに使うという、これまでの常識が通用しなくなる可能性がありますから、できるだけ早く、日常的な買い物をキャッシュレスで済ませられるよう準備しておいた方がよいでしょう。

 

どうしても現金でなければイヤだという人は、一般的な銀行と比較して店舗数が多いゆうちょ銀行に乗り換えるという方法もあります。

郵便局は、過疎地域も含めて店舗を維持することが義務付けられていますから、今のところ郵便局の数は大きく減っていません。しかし、かんぽ生命の不正販売事件からも明らかなように、日本郵便の収益性の低さが問題となっており、これだけの店舗数を今後も維持できるのかは微妙なところです。

整理すると、これからの時代においては、多くの銀行にお金を分散させず、メインバンクにお金を集め、銀行にとってできるだけ大口の顧客になることが重要です。また、銀行の店舗やATMは減少することを前提に、銀行との付き合い方を考える必要があるでしょう。家の近くや会社の近くに支店があるからという理由で口座を開設した人も多いと思いますが、今後もそうである保証はありません。

住んでいる場所にもよりますが、ネット専業銀行をメインバンクにしてしまい、どうしても現金を下ろす必要がある時にはコンビニATMを使うといった形に割り切ってしまうという考え方もあります。ネット専業銀行の中には、ジャパンネット銀行のように、ネット通販の利用を想定した機能など独自のサービスを提供しているところもあります。ネットの利用頻度が高い人は、要検討でしょう。

近年、顧客が事業者に対していろいろと要望を出すのは「わがまま」であるとする風潮が強くなっており、「お客様は神様ではない」「サービスをタダと思うべきではない」「サービス提供者に対しても感謝の心が必要だ」といった意見をよく耳にします。

確かにそうした面があるのは事実ですが、もしそうであるならば、銀行が進める手数料の強化やキャッシュレス化についても、わたしたちは「わがまま」を言わず、粛々と受け入れる必要があるでしょう。しかしながら、銀行のサービス低下やキャッシュレス化については多くの人が反発しているというのが現実であり、これは一種の自己矛盾といってよい状況にあります。

自己矛盾が存在しているということは、その問題について十分なコンセンサスが得られていないことの裏返しですから、まだ議論の余地があると解釈できます。銀行の手数料強化をきっかけに、顧客が事業者に対して要望を出すことが本当に「わがまま」なことなのか、もう一度、原点に立ち返って議論していく必要がありそうです。

前回記事「日韓対立による経済的打撃は、実はそれほどでもない理由」はこちら>>

 
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