体力の低下を防ぐには運動をするのがよいという話は確かにその通りですが、むやみにスポーツをすればよいというものでもないでしょう。過度な運動は、老化を早めたり寿命を縮めるという研究結果もありますし、準備不足で運動をすればケガを招きます。

 

時間がない中で運動量を確保するためには、高齢者の運動を参考にするのがよいかもしれません。

男性、女性とも高齢者の運動量や基礎体力は増加傾向にありますが、高齢者ですから激しいスポーツをしているとは思えません。ウォーキングなど負荷のかからない運動を増やしている可能性が高く、こうした運動であれば、通勤など日常生活の中に組み込むことも可能です。

 

実は、1日の平均歩数を調べると地域ごとに顕著な違いを見つけ出すことができます。東京や大阪など大都市圏に住む人の1日あたりの平均歩数は、クルマ中心の地方在住者に比べて圧倒的に多いというデータがあります。1日の平均歩数は駅の密度と関係が深いことも分かっていますから、通勤が運動量を大きく左右しているのはほぼ間違いありません。

もし都市部に住んでいてクルマ通勤でない人の場合には、意図的に仕事で歩く距離を長くすれば、運動不足の一部を解消できる可能性があります。クルマ通勤の人は、通勤そのものを徒歩にすることは難しいですから、何とか時間をやりくりして、運動の時間を確保する必要があるでしょう。

もっとも、基礎体力の低下がすべて悪いことであるとは限りません。10代の基礎体力は、年々低下する傾向が顕著ですが、技術の進歩で社会の仕組みが大きく変わっていますから、これもある意味では当然の結果といえます。昭和の時代、マイカーブームの到来で、人が歩かなくなることに対してかなりの批判や懸念がありましたが、大きな健康問題が発生しているわけではありません。

「過ぎたるは及ばざるが如し」というのはすべての事象に当てはまります。現在、運動不足が指摘されている30代後半の女性についても、無理に激しい運動はせず、日常生活の中で体を動かすよう意識するところからスタートすればよいと筆者は考えます。
 

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