――お金持ちの人と一般の人。どんどん差が開きそう……。

 

柴山:はい、このままでは豊かな人がますます豊かになっていきます。

私たちは「お金を失うこと」に対する恐怖感が強い生き物です。ノーベル経済学賞を受賞した一連の研究でもわかっていることですが、「1万円お金が増えたとき」と「1万円お金が減ったとき」では、「1万円お金が減ったとき」の方が、2倍くらい大きな衝撃を受けると言われています。

もし「50パーセントの確率でお金が1万円増えるけれど、50パーセントの確率でお金が1万円減ります」と言われたら、損をする気がして、手を出したくないですよね。

でも、「50パーセントの確率で2万円増えますが、50パーセントの確率で1万円減ります」と言われたら、バランスが取れる気がしませんか?

そういう投資法があれば、「やろう!」と思うかもしれませんが、さすがにないですよね。

――そのため、「投資でお金が減ると怖い」と多くの人が尻込みしてしまうんですね。

柴山:はい。でも、富裕層は別の恐怖感があるんです。「今ある資産を生活費として使って、なくなってしまうのが怖い」という恐怖です。今の資産額を維持したい思いが、資産運用につながるんですね。

海外の富裕層の間で基本とされているのが「長期・積立・分散」の資産運用です。これは、
・10年以上の長期投資
・毎月一定の金額を投資する積立投資
・世界中のさまざまな資産への分散投資
を組み合わせたものです。

3億円ある人が、もし年5%で資産が増えれば、1年で1500万円増えることになります。

――使っても使ってもお金がなくならない……。

柴山:まさにそう! 豊かな人は資産運用によって、ますます豊かになっていくのです。

逆に今はお金がない人が、なぜ資産運用をしないかというと「今あるお金を失いたくない」という恐怖感があるから。豊かな老後を送りたいという気持ちよりも、「今日や明日使うお金を減らしたくない、守りたい」という気持ちが強くなるんです。

――そこに気づけないと、お金持ちとの差はどんどん開いていく……。

柴山:自分で気づくことは難しいので、的確なアドバイザーが必要です。

「資産運用をする」といっても、すべての人が合理的に運用できません。例えば、「ホームバイアス」という言葉があるのですが、自分の国やよく知っている企業などに投資が偏ってしまうことです。
投資をしているという場合でも、日本株や日本の不動産に偏って投資しているケースがあるのではないでしょうか。

 

――「知っている会社の株なら安心」と考えたりしますね。思いつきや個人的な感情に左右されて……。

柴山:そうなんです。私たち人間は、よりよい投資を見極めることに、実は向いていません。感情に従わず、心理的なワナにはまらないように合理的に考えて行動できるようなタイプの人だけが、自分で運用してもうまくいくのです。

一般家庭でありながら、大きな資産を築いた妻の両親を見ていても、「自分で投資商品の売り時や買い時を考えている」なんてことはありません。まったく手を触れずに、プロにお任せして資産を築いていました。

資産運用は自分だけでがんばろうとせず、合理的に投資が進められるような、いいサービスを利用することも大事だと思います。

文/西山美紀
撮影/山本遼
構成/片岡千晶(編集部)

 

前回記事「アメリカ人と日本人、両親の資産額がひと桁違うのはなぜ?【ウェルスナビ・柴山和久さん】」はこちら>>

 
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