真っ直ぐなまま壊れていく……痛めつけたい衝動の裏にあるのは


あるきっかけから「隠れビッチ」をやめ、素のままで生きることを決めたひろみ。そんな時に出会った三沢は、素の彼女をそのまま愛してくれる男性でした。ところがその付き合いがきっかけとなって、ひろみが抱える根深い問題が浮き彫りになってゆきます。

佐久間 監督から何度も言われたのは「思っているだけでは伝わらない、映像としてどう表現するかを考えろ」。ひろみは基本的にずっとテンションが高く、スイッチを入れて挑まなければいけなかったので、想像以上に大変でした。

森山 特にひろみが「隠れビッチ」をやめて、三沢と出会ってからの中盤以降は、走ったり叫んだり、怒ったり笑ったり泣いたり、喜怒哀楽もアクションも激しかったね。三沢との出会いで彼女の内部の爆発が始まっていく。そこには何らかの理由があるだろうなと思った。

佐久間 ひろみは三沢さんとの関係に「依存」しはじめることで、自分の「過去のトラウマ」に気づいていくし、反省して変わりたいと思っていくのかなと、私は思いました。

森山 ひろみが男性を手玉に取るのはゲームみたいなもので、勝てばそれで終わり。自分の中にある欠落を埋める方法って、仕事とかお酒とか人によっていろいろだけど、ひろみはそこで味わう勝利みたいなもので埋めてるんだよね。

佐久間 「隠れビッチ」をやっていた時って、ただ楽しかったんだと思うんです。でも映画が描くのってそういう悪女ぶりじゃなく、ヒロインの激しい「心の内」で。だからこの役に挑戦したいなと思ったんですよね。

森山 後半のひろみのこじらせ方がより痛々しく見えるのは、由衣ちゃん自身のまっすぐな一生懸命さが役の中にあったからだと思う。まっすぐなままどんどん壊れていく、それが面白かったし、ちょっと怖くもあった(笑)。

佐久間 三沢とひろみの関係のように、何をやっても森山さんが受けとめてくださったので。

 

森山 三沢は抑えめな演技だし、ひろみにずっと痛めつけられているように見えるけど、彼も自らひろみのようなタイプを呼び込んでしまう人間なんだと思う。それもある種の相手に対する「依存」なのかなと。でもひろみほど重症じゃない、もしくはひろみよりも年齢や経験を重ねているから、立ち止まるタイミングが作れたんだと思う。

激しい感情を露わにし、物語を動かす軸となる役を演じることの多い森山さんですが、今回は受け身な演技が印象的。

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