退職後は週3~4回は父母の病院の付き添いに行くほか、両親にかわり家事全般を担当する毎日。駆け抜けてきた20代30代を経て、40代で突然の退職ではあったものの、佐藤さんの中に不安感はなかったそうです。

 

「長年、なかなかできなかったことをやっとできるようになり、焦りや不安よりも納得感や安心感のほうが強かったです。仕事一筋で家のことは母にずっと負担をかけてしまっていましたから」

 

家事や介護中心の毎日を送るなか、しばらくすると前職の同僚から、在宅でもできる業務委託の仕事の依頼が。「スキルをにぶらせない」という感覚で少しずつ引き受けるようにしたのだそうです。そして、もう一つ、退職を機に佐藤さんは新たに始めたことがあります。それが古典をテーマにしたエッセイの執筆。今はブログで定期的に発信しています。

「もともと高校生の頃から日本の古典が大好きで。大学も国文学が専攻です。大学院にも通いまして、本当は博士課程まで進学して研究を続けたかったのですが、なかなか狭き門で難しくて。でも退職を機に時間に余裕ができたので、新たな挑戦としてブログを始めてみました」

現在は幸いにもご両親の体調も落ち着いてきたとのこと。直近では、Waris経由で紹介された教育系ベンチャーで業務委託のお仕事もされていました。そんな佐藤さんにとって今は「週3日ワーク」が心地よいバランスだと言います。

「会社員時代は猛烈に働いていて会社での拘束時間も長かったですから。そこから解放されたのはフリーランスになって本当に良かったことです。今は週3日働いて、残りの週4日で両親の様子を見ることができる。会社員時代は時間的余裕がまったくなかったのですが、今は余裕を持って両親の状況が把握できているので、それが何よりの安心感につながっています」

フリーランスというと20代30代の若い世代向けの「新しい働き方」だと思っている人がいらっしゃいますが、実は佐藤さんのように経験とキャリアを積んで40代からチャレンジする方もいます。人生100年時代、ずっとフルタイムの会社員で走り続けるのはむしろ現実的ではありません。そのときそのときのご自身のおかれている状況に応じて、働き方も柔軟に変化させていく。そんな形もあること、ぜひ知っていただければうれしいです。

前回記事「50歳の私が、希望の会社に正社員で転職できた理由」はこちら>>

 
  • 1
  • 2