もしもゲイだった場合、「かつての男として自分を愛してくれた夫」が取り戻せないのは悲しいけれど、ゲイでなくても多くの夫婦が40近くなれば、穏やかな友情で結ばれるようになります。二人の行く道を、きっと見つけることができると思います。

 

もう1つは、思いもかけない些細なことで、彼が傷ついてしまったという可能性。男女の脳の違いからくるものです。男女共に、異性のちょっとした言動によって、全てが嫌になる、ということがありますが、その原因は互いにまったくわからないことが多いんです。

 

例えば、以前TV番組である芸能人の方が話していた、前の彼女と別れた理由というのが「僕の帽子が飛んで道路に落ちたとき、彼女が拾ってそのまま渡した」というものだったんですね。彼はその時、帽子の汚れをサッと払ってほしかったのだそうです。払わなかったことで、あらゆることが不潔に感じられるようになってしまった、と。……これだけ聞くと、そんなことで⁈ 思われるでしょうが、これはもう理屈ではないのですよ。特に男性というのは「想念」で生きていますので、自分の中の世界観が一か所でも壊れると、それがたとえ勝手に作ったものでも、すべてが崩れ落ちてしまうことがあるのです……。

つまり男性は、ある部分においては“妄想で”女性を愛しているということ。男性は自分の脳の中で、点をつなげて面にしてしまうところがあるんです。なので男性が女性を美人だと思うためには、たとえば「くちびるがふっくらしていて綺麗」とか、「うなじが綺麗」などといったポイントがいくつかあればいい。「男性に綺麗だと思わせるためには、3箇所だけ力を注げばいい」というモテテクもあるくらい(笑)。逆に全てにしっかりメイクをしすぎると、男性はどの箇所を見たらいいのか分からなくなります。それよりも見るべきポイントを分かりやすくしてあげることが効果的。すると男性は、あとはそれをつなげて勝手に自分の理想像を作り上げてくれますから。

そして、幻想を抱かせるのが簡単であるということは、逆に崩れるときも簡単だということです。3つのポイントの1つが壊れたら、3分の1が壊れるということになりますから、大きいですよね。そして困ったことに、男性が見ているポイントは人それぞれですから、そのポイントが何かは女性側には分からないのです。

夫はおいもさんさんに対して、何か幻想を見ていて、それが何かの拍子に壊れたのかもしれません。けれど、それもおいもさんさんのせいじゃない。向こうが勝手に幻想を抱いたわけですから、おいもさんさんはおもいさんで、「私は私よ、こういう女性だけど一緒に歩いていってほしい」と堂々としていればいいと思います。
だって、夫婦というのは、その妄想の壊れを乗り越えて愛し合うものだから。そこを越えて、ずっと長い間一緒にいることで、互いだけの愛おしさというものが生まれてくるわけです。おいもさんさんはまだ35歳。おそらく結婚して10年経つか経たないかぐらいでしょうから、まだまだこれからですよ!

というわけで、どの原因にせよ、夫におびえず、しばらく放っておけばいいと思います。気にせず、あまりかまわないで。そのうち夫が、本当の原因を打ち明けてくれるかもしれないし、夫の方が機嫌を取り戻して元に戻るかもしれない。なんたって夫婦生活は気が遠くなるほど長いのですから、あわてないで大丈夫です。

PROFILE
  • 黒川伊保子1959年、長野県生まれ。人工知能研究者、脳科学コメンテーター、感性アナリスト。奈良女子大学理学部物理学科卒業後、コンピューターメーカーでAI(人工知能)の開発に携わる。1991年に、世界初と言われた日本語対話女性型AIを開発。また世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発。近著に、40万部超のベストセラーとなった『妻のトリセツ』、その続刊の『夫のトリセツ』(講談社α新書)も好評発売中。 この人の回答一覧を見る
  • 山本 奈緒子1972年生まれ。6年間の会社員生活を経て、フリーライターに。『FRaU』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。 この人の回答一覧を見る
 取材・文/山本奈緒子
この記事は2019年2月17日に配信したものです。
mi-molletで人気があったため再掲載しております。

 

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