定年退職を機に、住む場所を変え ダウンサイジングを

 

野尻:実は少し前に、郊外の自宅を離れて、都心にマンションを買い替えたんです。以前は片道1時間半の通勤でしたが、だんだん身体がつらくなってきて……。
当時は子どもが3人いたので4LDKに住んでいましたが、郊外だったので家賃は安く抑えられました。でも、数年前にダウンサイジングしようと、子どもたちをどんどん独立させて、都内に引っ越ししたんです。一番下の子も少し前にようやく独立しました。

最近お金をかけたところといえば、このあたりの引っ越しなどですかね。

――お金はあればあっただけよい、と思いますか?

野尻:あった方がいいとは思いますね。でも、お金があればあるだけ、生活レベルを上げていってしまうと、結局資産形成ができません。

外資金融勤務だった一方で、私自身がお小遣い制にしていたのは、生活費を上げないようにする目的もありました。
会社が倒産する経験をして、生活費をいったん上げてしまうとなかなか下げられないという教訓を得ました。だから、生活水準を上げすぎないように心がけています。
うちは質素、とまではいきませんが、ごく普通の生活だと思います。駅の立ち食いそばにも行きますしね(笑)。

――ご自分でブレーキをかけているということですね。

野尻:はい、働くためのインセンティブは、いい生活をしたいことですよね。
ですが、収入が上がったのと同じように生活費を上げていったら、退職後に収入が減ったときに、生活費を下げるのは無理なんです。

生活レベルを下げずに、収入が減った分に合わせて、生活費のレベルを下げること。これがダウンサイジングなのですが、その方がいいよねと思っています。
だから、家賃や生活費の安い地方都市に住むのがおすすめだよと言っているのですが(笑)。

周りにあわせて生活費を上げていかず、自分でお金をどのように使うかという選択肢を持っていきたいですよね。

 

――お金に振り回されたくないですものね。

野尻:そうなんですよ。ニューヨークのオフィスに勤務していたときは、お金の管理を自分でしていたんです。でも、日本に帰ってきたら、子どもたちの通う学校の振込口座先が全部違ったので、振込み手続きがものすごく煩雑になってしまって。
そこでお金の管理は妻は任せ、私は逆にお金をコントロールされる側になろうと思い、お小遣い制にシフトしました。

でも、お金をコントロールされるのは本当は誰もが嫌なもの(笑)。ですから、お小遣いの中では自由に使っています。

人は何もなければお金をどんどん使ってしまうので、ある程度コントロールされることが必要なのですが、そのあたりはせめぎ合い。みんなの納得感のあるところに落ち着かせたいですね。
まあ私自身は、今は仕事が趣味と言っているほど、やりたいことや趣味がないんです。なので「お金をたくさん欲しい!」という欲求よりも、仕事を楽しんでいきたいという気持ちのほうが強いですね。

文/西山美紀
撮影/山本遼
構成/片岡千晶(編集部)


 

前回記事「老後のために夫婦で話しておくべき資産形成の方法【投資のプロに聞く】」はこちら>>

 
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