そんな負のスパイラルを抜け出す突破口となったのが、2012年に放映されたドラマ『TOKYOエアポート〜東京空港管制保安部〜』(フジテレビ系)。この作品から瀬戸さんはスタッフとの飲み会に参加したり、周囲と積極的にコミュニケーションをとるように。堅い殻を打ち破り、本来の自分を取り戻しました。同作の主演は、深田恭子さん。深田さんとは、この『ルパンの娘』が7年ぶりの共演となります。

 

「深田さんからは『こんなに笑う人だとは思わなかった』と言われました。相当暗かったんでしょうね、7年前の僕は(笑)」

そんなふうに過去の自分を笑い飛ばせるのは、歩んできた道のりに確かな手応えがあるからです。

「今はもう誰かにどう見られたいというのは気にしないですね。すごく自由です。こうやってこのまま年をとっていければな、と」

 
 

 

自分の発信が、落ち込んでいる人の支えになれたら


かつては「“可愛い”しか武器がなかった」と言う瀬戸さん。しかし、その確かな演技力は今や多くの人が認めるところです。

「お芝居は武器であり軸ですね。表現というものが好きで、その中で芝居が軸として真ん中にどーんとある感じ。絵を描いたり、声の仕事とか、表現の仕方はいろいろあると思うんですけど、いろんなことをやれるようになって改めて自分の帰ってくるところはお芝居なんだと実感しています」

昨年発売したアーティストブック『僕は、僕をまだ知らない』に自らの描き下ろしによる絵本「小さな神様」を収録するなど、小さい頃から絵を描くのが大好き。何かを表現することに深い探求心を持つ瀬戸さんが、それだけお芝居に惹かれるのは、お芝居に何があるからなのでしょうか。

「お芝居は、僕にとってはストレス発散にもなっています。閉じこもる役もありますけれど、お芝居を通じていろんなものを発散しているので、あまり僕自身はストレスがたまらないというか。何が魅力かはわからないですけど、単純に好きなんです、芝居をすることが」

 

突きつめると、そこにあるのは“発信”することへの使命感。毎朝、Twitterの公式アカウントで更新される「おはようございます」のつぶやき。公式ブログでも「Twitterで「おはようございます」と呟くのは、辛い環境にいるかもしれないが、今日もちゃんと朝を迎えられた喜びをお互いに感じ、希望のある1日にしたいし、してほしいからだ。」とその想いを綴っています。

俳優は、多くの人から注目される立場。そこに身を置く瀬戸さんはどんなことを考えながら日々活動しているのか。最後に、そう尋ねてみました。

「一番は楽しいからなんですよね。そこが一番じゃないと続けられないし、やれないと思う。その次が、楽しんでもらいたいという気持ち。負のオーラをまとっていたり、落ち込んでいる人の支えになれれば」

誰かの力になること。瀬戸さんが、今この瞬間も苦しんでいる人へのいたわりを忘れないのは、自らもまた発信に携わる人たちによって勇気づけられた経験があったからでした。

「僕がまだ福岡で学生だった頃、地震があったんです(※2005年の福岡県西方沖地震のこと)。そのとき、(明石家)さんまさんが福岡まで来て、でっかい体育館みたいなところでトークショーをしてくれたんですよ。それがすごくうれしくて。怖かったけど、自然と笑っている自分がいたりして。そんなふうに自分の発信で少しでも気持ちが明るくなっていればうれしいし、一人でも僕で元気をもらっている人がいる限りは、ずっと続けていきたいです」

 

瀬戸さんがぐっと凜々しくなったのは、男の強さを身につけたからだと思っていました。けれど、もしかしたらそれだけではないのかもしれません。本当の男らしさとは、人の痛みに心を寄せられる優しさ。見るたびに男らしさが増していく瀬戸さんは、誰よりも優しい心の持ち主でした。
 

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<ドラマ紹介>
木曜劇場『ルパンの娘』

累計発行部数10万部を突破した横関大の同名小説を実写化、泥棒一家の娘と警察一家の息子の許されない恋を描くラブコメディ。“普通の人生”を願う主人公・三雲華を深田恭子、真っ直ぐでピュアな桜庭和馬を瀬戸康史が演じる。監督・脚本・プロデューサーには大ヒット映画『テルマエ・ロマエ』や現在公開中の『翔んで埼玉』を手掛けたスタッフが集結。また小沢真珠、栗原類、どんぐり、藤岡弘、(特別出演)、加藤諒、大貫勇輔、麿赤兒、そして渡部篤郎という脇を固めるキャストの濃厚さや突き抜けたコメディっぷりも話題に。毎週木曜22時~22時54分放送中。

撮影/塚田亮平
取材・文/横川良明
構成/山崎 恵
(この記事は2019年7月24日に掲載されたものです)
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