時代によって支配される国が違い、複雑な時代背景を持つトリエステは、ウンベルト・サバという有名な詩人が生まれ暮らした街です。須賀さんはそのサバのゆかりの地を訪ねて、詩人の人生を思い、時代に翻弄された人々を思い、同じくサバが大好きだった今は亡き夫を思い、トリエステをひらすら歩き回ります。

私たちも、本を片手に須賀さんが歩いた道を、ひとつひとつの場所を確認しながら歩きました。これがあの書店ね、このカフェで一息ついたのね、これがあのユダヤ人墓地、この細い上り道があの「山の通り」ね。須賀さんが「息切れするほど急」と言っていた坂道は、本当に大きな角度で傾斜していて、母などはよく手をつかないで上がれたなと思うほど。
なにしろ坂道が多く、街としては高齢者にはあまり優しくはないかもしれませんが、母は疲れもあまり見せずに意気揚々と歩いて見せました。この調子だと来年も元気にヨーロッパへ行けそうだわ~と、確信を深めたことは大きな収穫でしょうか。

こちらがサバの詩集に登場する「山の通り」。かなりの急こう配です。左がユダヤ人墓地。

須賀さんのエッセイが夜の空港に到着したところから始まり、苦しく厳しかった歴史も描かれていたせいか、行く前に想像していたトリエステは薄暗く、グレーがかった寂しげな街。
しかし、それは嬉しい誤算でした。街の広場には光が燦々と注ぎ、ホテルのバルコニーから臨む深い青色のアドリア海には立派な帆船、夕方にはピンク色にたなびく雲と夕日。新鮮で美味しい魚介類、人懐っこくて感じの良い人々。物価は安いし、ホテルのレベルも高く、日本から遠いということを除けば旅行者には申し分のない、もう一度絶対に来たいと思わせる街でした。

ホテルのバルコニーから臨むトリエステ湾の夕暮れ。本当に美しく、また絶対に来ようと決心した瞬間です。
 

トリエステはフィナーレとしてこの旅の後半に訪れ、前半はクロアチアのモトブンというトリュフの名産地に2泊しておりました。来週は、今回の旅のスケジュールについてお話しますね。ではまた来週!

 

『母とヨーロッパへ行く 母+娘=100歳~の旅』

太田篤子 著 講談社刊 144ページ 1400円(税別)

持って行ってよかったおすすめの持ちもの、ホテルの検索の方法、ホテルへ直接予約するときのメール例なども載っています。楽しく安全な母娘旅のためにお役立てくださいませ。

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