漫画は、矢方さんの飼い猫の視点から乳がん治療中の様子が描かれています。
かわいらしい絵とほのぼのしたやりとりゆえ、「闘病記」といったヘビイな印象はないものの、術式の選択や乳房再建といった重大な決断がどのようにされていったのかがきっちりと描かれていました。

 

「がん患者」の前に、ひとりの女性であるということ


そもそも「がん」というと、腫瘍を取り除く外科的手術や抗がん剤といったイメージがありますが、家族の存在も非常に重要で、実際、がん患者の家族は「第2の患者」とも呼ばれるほど心身が疲弊することも知られています。
しかし、矢方さんを女手ひとつで育ててきたお母さんは、びっくりするくらいクールで強いんです。
矢方さんが乳がんを伝えた時、お母さんは一言「保険の手続きしといたから心配すんな」とさらり。さらに毎回病院には付き添うことを言い添えて、会話は終了……!
そっけなく思えるかもしれませんが、闘病に入る娘を支える母の姿としてこれほど頼もしい姿勢はない!とひとり静かに感動してしまいました。

 

というのも筆者も35歳でがんになり、妊よう性の問題や家族のケア、仕事と治療のやりくりなどで頭を悩ませているひとりゆえ、お母さんの「心配しすぎない・干渉しすぎない」姿勢がいかに患者にとってありがたいか、骨身に沁みるのであります。

そもそもですが、矢方さんも「乳がんの人」ではなく、声優という夢に向かって精一杯生きるひとりの女性。
どうしても大病を患うと、名前の上に「がん患者」というラベルが貼られてしまう感覚がありますが、その前に子どもの母親であったり、妻であったり、職業人であったり、娘であったりする。そこへたまたま、「がん患者」という新しい肩書が加わった……そんなことを教えてくれるような、新たなる“がんの日常漫画”をぜひ読んでみてください!

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『27歳のニューガン・ダイアリー ~ボクの美紀ちゃんが乳がんになった話~』
漫画サイト&アプリ「コミックDAYS」にて連載中
原案:矢方美紀、漫画:冬川智子

 

アイドルグループSKE48を脱退し、声優になる夢を追いかけていた最中、25歳で乳がんになった矢方美紀さん。がんの宣告、手術、抗がん剤治療を経てホルモン療法を受けながら暮らす“現在”の様子を綴っています。

 

構成/小泉なつみ
 
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