「ハレ」と「ケ」という言葉を知っていますか? 「ハレ」とは晴れ着や晴れの日というようにお祝いやお節句などの特別な日。それに対して「ケ」とは普段の生活、日常のことをいいます。
礼儀作法や冠婚葬祭など日本のしきたりに詳しい岩下宣子さんは、「日本人は、『ハレ』日には晴れ着を着て、美味しいご馳走を食べて心と体のエネルギーを充電し、発散してまた普段の生活に戻るということをくりかえしてきました。平凡な日常があるから『ハレ』の日が輝くのです。『ケ』ばかり続いてもつまらないし、毎日が『ハレ』の日ばかりでも疲れてしまいます」と語ります。
「ハレ」と「ケ」は、いわば生活のメリハリ。衣食住すべてが特別な「ハレ」の日は、それぞれに特別な食事「行事食」があります。
今回は、岩下さんの著書『図解 日本人なら知っておきたい しきたり大全』から、節分や雛祭りといった冬から春の行事食をテーマにお届けします。


[節分の福豆]二十四節気では翌日から春。豆をまいて邪気を払う

 

冬と春、季節の境目にあたる「節分」は、旧暦でいえば「大晦日」のようなもの。日にちは毎年違いますが、江戸時代以降は立春の前日を指すようになり、2020年は2月3日が「節分」にあたります。

 

福豆 豆まきに使う豆を、自分の年の数、地方によっては年の数より1つ多く食べることで、鬼退治(邪気祓い)ができるとされる

福茶 年配者など年齢の数だけ豆を食べるのが大変な場合は、豆に昆布、梅干しなどを加えたお茶を飲んでもよい

伝統的な豆まきの方法 豆まきに使う豆は「福豆」と呼び、まいた豆から芽が出ると縁起が悪いので、必ず炒り豆を使う。鬼を射る(炒る)=邪気を祓う、という意味もある。豆は、枡に入れ、鬼が嫌うといわれる柊(ひいらぎ)、鰯(いわし)、山椒の木で作ったすりこぎを添える。
奥の部屋から順に玄関へと進んでいく。窓を明けて、ひと部屋ずつ豆をまいたら、すぐに窓を締めて、最後に玄関にまいて、戸をしっかり閉める。
「鬼」とは季節の変わり目に生まれる邪気、災いや病気を起こすと信じられた悪い気のこと。形のないものであり、伝統的な豆まきでは鬼役はいなくてよいとされています。
豆をまくのはその家の主人(家長)、または「その年の干支生まれは吉運」とする考え方があり、年男(現代では年女も)の役目。子どもやその他の家族は、豆をまく人についてまわり、豆をまいたらすぐに窓や戸を閉めます。
 

 

[雛祭りのご馳走]桃の節句は蛤で祝う

 

雪や氷が解け始め雪が雨に変わる頃を、二十四節季で雨水(うすい)といいます。昔から農耕の準備を始める目安とされてきました。女子の健やかな成長を願う雛祭りは、昔は水に関する行事だったことから、雨水の日に雛人形を飾ると良縁に恵まれるといわれています。

 

桃の節句を祝うのは華やかなちらし寿司や蛤のお吸い物。蛤は貝殻がぴったりと対になっていることから、仲のよい夫婦を表し、一生一人の人と添い遂げるようにという願いが込められています。
 

岩下 宣子
「現代礼法研究所」主宰。NPOマナー教育サポート協会理事長。1945年、東京都に生まれる。共立女子短期大学卒業。30歳からマナーの勉強を始め、全日本作法会の故・内田宗輝氏、小笠原流・故小笠原清信氏のもとで学ぶ。1984年、現代礼法研究所を設立。マナーデザイナーとして、企業、学校、商工会議所、公共団体などでマナーの指導、研修、講演と執筆活動を行う。
著書には『知っておきたいビジネスマナーの基本』(ナツメ社)、『ビジネスマナーまる覚えBOOK』(成美堂出版)、『好感度アップのためのマナーブック』(有楽出版社)、『図解 社会人の基本マナー大全』『図解 社会人の基本 敬語・話し方大全』などがある。
 

 

『図解 日本人なら知っておきたい しきたり大全』
著者 岩下 宣子 講談社


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構成/生活文化チーム

出典元:https://kurashinohon.jp/1168.html