『花と雨』以外にも、笠松さんの出演ラッシュは続く。現在オンエア中のドラマ『僕はどこから』(テレビ東京/毎週水曜深夜0時12分~)では、ある特殊な才能を持つ主人公に替え玉受験を依頼する、天才青年の玲を演じている。天才なのに替え玉を依頼するのは「玲は人の心がわからないので、小論文が書けない」から。『花と雨』では右手だったが、玲は左手で箸を持っている。「左手で持ってました? 僕はわりと器用で本番に強いので、右利きですけど、天才のわかりやすいアイコンとして、左手にしたのかもしれません」とさらりと言ってのける。

2月2日(日)放送のスペシャルドラマ『全身刑事』(テレビ朝日/夜9時~)では、学生時代に“伝説のクイズ王”として鳴らし、歴代トップの成績で警察庁に入った若手刑事を演じる。主人公を演じる内藤剛志さんのバディ役で、クレジットは二番手。テレビドラマでいえば、笠松さんのキャリアにおいてもっとも多くの人の目に触れることになるだろう。

「人としてたくさんのことを学んだ、本当にいい現場でした。内藤さんはもちろん、中山忍さん、尾美としのりさん、古田新太さん、先輩方の言葉が深すぎました。基本的にはあまり先輩に甘えないようにしてるんですけど、内藤さんが初日からとても親身になってくださり、この作品のことや世間話などを内藤さんから話しかけてくださって気遣いを感じました。そして2日目にはもうおしゃべりが楽しくて、完全にお腹を見せてしまいました(笑)」

 


悩みや不安から解放される時間


生意気に見えるけれど素は人懐っこい笠松さんは、間違いなく先輩やスタッフから可愛がられるキャラクターだ。無骨に見えて大の子供好きで、上京後に飲食店と平行して、無認可保育園でアルバイトをしていた時期もあるというギャップも良い。「子供はめちゃくちゃ好きです。でも、今の時代、自分みたいなのが『子供好き』って言うと警戒されませんかね……?」と警戒するところが可愛らしい。
「小学生くらいになると自意識が芽生えて素直じゃなくなるけれど、6歳くらいまでの子はみんな素直で、遊びたいなら遊ぶ、嫌なら嫌って言ってくれるシンプルさがいい。俳優の悩みって常にあるんですけど、彼らに会うと悩みを単純化できて、ヒントがもらえるんです。なによりも、みんなとにかく可愛いんですよねぇ」

 

出演作に話を戻すと、地方局の連ドラ『エ・キ・ス・ト・ラ!!!』(関西テレビ/毎週木曜深夜0時55分~ ※配信サイトGyaO!で視聴可能)では、第6話の主人公として、高学歴御曹司の大学生エキストラを演じている。笠松さん自身、エキストラ時代は長かった。

「台詞がない役をエキストラとするならば、3〜4年くらい前までやっていました。初期はインターネットでの告知を見て自分で応募して、途中からはオーディションで受かって、みたいな。苦労しているのは僕だけじゃなくて、俳優を目指している9割以上の人たちは、そういう小さい役から始めて、経験を積んで、上がっていってるんですよね」

いつかスターの椅子に座れたとしたら、「そうですね。その時にならないと分からないですから。その椅子に座れた時に考えます。今は座ったことがない椅子に座ってみたい。だから、やったことがないことをやりたいんです」と目を輝かせる。

2020年はこれ以外にも、まだ情報解禁されていない出演作が何本も待機中。多忙な日々におけるリフレッシュ方法は、似顔絵を描くことと筋トレだそう。たしかに、『花と雨』では長身に程よく筋肉の付いたプロポーションが印象的だった。

「両方とも無心になれるので、不安と戦わなくていい、落ち着く時間です。ジムで自分が使いたいマシンが埋まっているのが嫌なので、人がいない深夜2時頃に行くのが好きです」

笠松さんは日夜、自分と戦いながら、お芝居に取り組み続けている。

「生きていくのってみんな大変だと思うんですよね。楽しいことばかりじゃないし。僕自身、しんどいときに心が別の世界に旅をする感覚になれる映画やドラマにたくさん出合ってきたので、そういうものを一人でも多くの人に届けられるようにがんばります」

 

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<映画情報>
『花と雨』
 



日本のヒップホップシーンにおいて歴史的名盤とされる、ヒップホップMC・SEEDAによる2006年発表のアルバム『花と雨』を原案に、SEEDA自身の自伝的エピソードも交えながら一人の青年が成長していく姿を描く。幼少期をロンドンで過ごした吉田は日本での環境になじめず、学校からも次第に距離を置く。世界での活躍を目指す姉との約束を胸に、ひとり音楽活動に没頭するが……。監督は土屋貴史、原案/音楽プロデュースはSEEDA、出演に中村織央、光根恭平、花沢将人ら。ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開中。

撮影/塚田亮平
取材・文/須永貴子
構成/山崎 恵

 

 
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