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130「80歳母、娘3人旅」帰国便が欠航！旅の終わりに待っていた過去最大の試練『母とヨーロッパへ行く』

2020.2.5

太田篤子

そしてさらに１時間後。ツアー客と私たち個人客３組くらいの40～50人ほどを乗せたバスは40分ほど走り、なんだか工場地帯にポツンと立つホテルに到着しました。
疲れの色が濃くなってきた母を早く部屋に連れて休ませるべく、とにかく一番にフロントに行きました。あなた団体旅行？　個人旅行？　とフロントの女性。個人です、と答えたら、まず団体が先よ、と私の後ろのパスポートを数十冊持った添乗員らしき日本人女性を手招きしました。

そして、その女性はフロントの人と数十冊のパスポートをトランプのように分けながら部屋割りを始めました。30分以上待ったでしょうか、フロントの人が、私たち個人旅行組に向かっておもむろに手を上げました。ごめんなさい、もう部屋はいっぱいよ。Ｂホテルに行くのでバスを用意します。え……。また、いっぱい……ですか。

もう膝から崩れ落ちそうでした。適正人数を予測するということがアリタリア航空は非常に苦手なようです……涙。またさらに30分、やっとのことＢホテルにつくと、そこは、本当に、ザ・ビジネスホテル。廊下は薄暗く、電気はセンサー式になっていて、その近くに行かないと明かりもつかない……。怖い……。

部屋の窓は駐車場に面していて、外を歩く人と普通に目があうありさま。ブラインドを閉めながら私は本当に情けなくなってきました。これまで夢のように楽しかったイタリア旅行の最後に、なぜこのホテルに泊まらなければいけないのか……。こんなことなら多少無理しても自分でホテルを選べばよかった。昨日のアドリア海のピンクの夕日、きりりと冷えた黄金色のワイン、お皿の中で今にも跳ねそうなエビ、私の頭の中でスライドショーが繰り広げられます。ブラインドの紐を握りしめながら、土色の顔をしてがっくりと肩を落とす私に、「お母さんは平気よ」とベッドから声をかける母（なすがままの人）と、「あこちゃん、頑張ろ頑張ろ」と私の肩をたたいて励ます妹（のんびりやの人）。そうだ、落ち込んでいる場合ではな～い！　カスタマーセンターに電話をしなければ！！

目に浮かんだのはこんなひと皿。トリエステ名物の手長エビをトマトソースであえたパスタ、「カンピアラブーザラ」。トリエステの定番ともいえるメニューです。

これから英語で交渉するのか……と、ほとほと気が重くてもやるしかありません。そして、イタリア語訛りの英語が聞こえてきました。キャンセルになった飛行機の代替便を予約したいんです！一刻も早く。イタリア語訛りの英語はゆっくり答えます。５日後まですべて満席よ。５日後の便だったら今すぐ予約できるわ。

ノ~~~~~~~!!! 　ちょっと、待って。パリからは？　ロンドンからは？　乗換、オッケー、グループ航空会社、オッケー、なんでもオッケー、それでもないの？？？　
めちゃくちゃな文法の英語でまくしたて、なりふり構わぬ声に押されて、相手の声色が少し優しくはなったものの、答えは、変わらず。それも満席よ。そして、こちらではどうにもできないから空港のカウンターで聞くのがいいわ、と。いやいや、空港のカウンターではそちらに電話しろって言われたのよ～～～～！

さて、私たちは、ローマでさらにあと５泊もしなければいけないのでしょうか。
次回に続きます……。

『母とヨーロッパへ行く母＋娘＝100歳～の旅』

太田篤子著　講談社刊　144ページ　1400円（税別）

持って行ってよかったおすすめの持ちもの、ホテルの検索の方法、ホテルへ直接予約するときのメール例なども載っています。楽しく安全な母娘旅のためにお役立てくださいませ。

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PROFILE

太田篤子Atsuko Ota

大学卒業後、大手百貨店で美術オークションの仕事に就く。24歳でレーサーの太田哲也氏と結婚して退職。夫がレース中の事故で重傷を負い、３年間看病にあたる。その後、夫の立ち上げたモーターブランドの会社でともに働くことに。２人の子どもが手を離れ、母を連れて旅行に行くうち、年配の親を連れての海外旅のノウハウを得る。特にヨーロッパのクルマ旅が得意。