資本市場では社会問題や組織の適正運営に着目したESG投資に大きな注目が集まっていますが、ESG投資の項目には人事の多様性も含まれています。

日本の公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、すでにESG投資を強化する方針を打ち出しているのですが、これはとりもなおさず、今後は企業の人事も多様化していかないと、私たちの年金すら危うくなることを物語っています。

人事に多様性がある企業の業績が良好である理由は2つ考えられます。ひとつは製品やサービスの開発能力が向上すること、もうひとつは人材の適材適所が進むことです。

 

昭和の時代には、画一化された製品を大量生産するという事業モデルがほとんどでしたから、とにかく安くてよいモノを作れば業績は拡大していきました。しかし社会の成熟化が進んだ今の時代は、消費者の価値観が多様化しており、単純に安く作れば売れるというものではありません。

 

このような時に、同じ感覚や行動様式の社員ばかりでは、アイデアが偏ってしまうことは容易に想像できます。日本では企業のグローバル化は英語の問題だと思っている人が多いのですがそうではありません。異なる行動様式や価値観を持った人と、あうんの呼吸ではなく、明瞭な言語でコミュニケーションを取ることがグローバル化の基本ですから、これは相手が異性であっても同じことです。

つまり女性の登用など人事の多様化が進んでいる組織では、外国人の登用も進みますから、これらはすべてセットになっていると考えるべきでしょう。

当然のことながら、この話は2つめの理由である適材適所につながっていきます。

企業というのは利益を上げることが至上命題ですから、それぞれの仕事にもっとも適した人材を必要な部署に配置しなければ、最大限の成果は得られません。能力がある人を、性別や人種といった理由で登用しないというのは、競争社会においては単なる「甘え」でしかありません。

これから市場環境はますます厳しくなってきます。同じような人たちだけで周囲を固めて「ぬくぬく」とビジネスをしたいという「わがまま」は、もはや通用しないと思った方がよいでしょう。

前回記事「ディズニー入園料値上げからみる、デフレ日本の「本当の危機」」はこちら>>

 
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