「皆の健康の為に、ソーシャルディスタンスを守りましょう。」と書いてある標識。

来たのだ!3月15日以来、初めてメトロを利用する時が。止む負えない用事で、どうしても歩ける距離ではないから仕方がない。

完全防備で、帰宅後は洗濯機で丸洗いできるもの。余計なアクセサリーなんかは付けずに。エイヤっと決死の覚悟を決めて、戦場に突入するかの様に、改札をくぐった。

地下鉄の入口、まずはこちらのステッカー。「【義務】皆の健康の為に、マスクを付けましょう。」と書いてある。シンプルで一瞬で分るデザイン。フランスは何時でも、センスだけはピカイチだ。
そして階段を下りると、改札前にはこちら。「皆さんを歓迎いたします。」「健康の為に、身に着けよう、善き心がけ(字余り)」てか、日本人はこんな事、子供の頃からやっていますが、なにか?と、独り言つ私。

日本には「手の内」と呼ばれる、腕を水平に伸ばした時の、脇の下から指先までの、あの微妙な幅がある。長すぎず、短すぎず、丁度良い按配の、この距離が、人との心地よい空間を保つ目安として、社会生活において存在していた。人の前を横切らないだとか、順番を守るだとかが、子供でも躾けられている私の国。

フランスは真逆と言える。人と接触する文化で、同僚やら友人、ご近所さんとのハグやらビズーは当たり前。恋人同士のくっつき様ったら、呆れて物が言えない位だ。

――あなたね、遠慮して待っていたら、何時まで経っても順番は廻って来ないのよ!うへぇ、そうですか。なんとまぁ、えげつない。そんな人達に突然、ソーシャルディスタンス云々を説いたところで、実際どうなん?なんて訝しく思っていた。

久しぶりに地下鉄を利用して、驚いた!の一言に尽きる。

こんな風に車内には、立ち位置の目安が貼ってある。距離にして1メートル間隔ってとこかな。
お向かいの席は着席禁止のワッペンが。無視して座っている人が居ないという奇跡!あれ?私のナイキ、地下鉄の椅子と同じ配色?!

現在の地下鉄にはあらゆる所に工夫が施されていて、全てがビジュアルで分かり易く出来ている。ワゴン内は約1メートル間隔に、立ち位置の目安が足形でマーキングされているし、座席には、前後左右に乗客が隣接しない様に、ここはダメ!とバッテン印のワッペンで示してある。シンプルで分り易く、流石はフランス、スタイリッシュなデザインでスッキリしている。改札には係員が常駐し、マスク着用者以外は構内に入れない。

「規則は破る為にある、破ってなんぼ。」と、心の何処かで思っているフランスに暮らす人々ですが、この通り!皆が守っていました。やれば出来る子達なのでしょうか、フランス人。

この徹底ぶりに、心底驚いた。パリのモンパルナス駅は17時。普通ならば芋の子を洗うような大混雑の時間帯で、此処はパリいちとも言えるハブステーション。こんなに人気のない状態に、十年間で初めて遭遇し、目を見張った。

多くの人がリモートワークを続けているし、私の様に自宅待機組も多いだろう。年末のストを機に、自転車通勤に切り替えた人が少なくない事も知っている。

いや、しかしね、それにしも、ね。フランスの皆さん、もしかして、とっても、とっても、頑張っているのかもしれません。いや、この一瞬で、判断は出来ませんよ、分りません。

でもさ、「我が国民を信じる」と言ったフィリップ首相に、この写真を見せたら、きっと褒めてもらえるよね、私達!と思えた光景ではあったのです。

外出制限解除から早一週間、これからが本当の意味での正念場。嗚呼、どうなることやら。私は引き続き冷静に、長い目で、見守る事と致しましょう。

ご覧の様に、ホームには人っ子一人居ません。時計は17時07分。本来ならば平日のラッシュアワーです。新しく導入された白線は、車内の乗車率を調整する為に、人々に並んでもらう為のもの。