「40代で亡くなったんですよね。早すぎる夫の死に直面したことで、自分が40代半ばになったときに、本当に定年までこのスタイルで行くの? やり残したことはないの? って思うようになって……。新卒のころから大切にしていた『子どもの幸せに貢献すること』というテーマにもっと直接かかわれることを仕事にしたいと思うようになりました」

 

辞めてすぐのころは知人の会社を手伝ったり、アルバイトをしたりという生活。そんななかで出会ったのがWarisでした。

 

「私が会社員として経験してきた仕事って、いわゆる『文系総合職』の仕事なんですよね。商品企画や新規事業の立ち上げ、販促、広報、人事などなど……。こういう仕事でフリーランスとして働けるという発想がなかったので、とても新鮮でした」

一昨年からはかねてから自分のテーマでもあった、家族や子どもについての学びを深めるため、社会人大学院にも通い始めました。今春、無事に修了予定です。

「私にとっては『稼ぐ仕事』としてのフリーランスがあって、そちらは週3日程度です。大学院へ通ったり家族支援のNPOでボランティアスタッフをしたり、そちらは『ライフワーク』という位置づけですね」

大企業の管理職として働いていたころに比べれば年収は半分以下ですが、それでも「生活は豊かになった」と語る加奈子さん。

「会社員のころってムダな出費も多かったんですよ。とにかく忙しかったのでオンもオフも移動はほぼタクシー。疲れたらエステやマッサージに行って。『管理職』という立場もあったので、身だしなみにも気をつかって……。でも今はいわゆる『仕事』をしている時間は週3日程度で、『子どもや家族』といった自分の本当に関心のあるテーマを深める活動もできています」

何より大きいのは、小学校高学年になった子どもとの時間をじっくり取れるようになったこと。

「会社員時代に比べて一緒に話す時間、出かける時間は増えました。子どもが成長する10年後、15年後の世界では、どんな働き方になるのか、まったくわかりませんよね。そういう意味では『週5日勤務の会社員』ではない、今の私のような働き方を見せることも意味があるのではないかと思っています」

「会社員としてはやりきった」と話す加奈子さん。今いる場所で「やりきった」と思ったら、それは次のステージへ行くサインです。最近、メディアで40代からを対象とした早期退職者募集のニュースをよく目にするようになりました。何かを始めるのに遅すぎるということはありませんが、それでも転職や独立など、働き方を大きく変えるには40代から挑戦しておいたほうが、その後の50代60代のキャリアに広がりが生まれるのも事実。

フリーランスは不確かな部分も多い働き方ですが、一方で、加奈子さんのように位置づけを明確にしたうえで、ご自身のライフワークとの両立を探るのもひとつの方法です。働き方には正解はありません。自分自身にとってぴったりくるライフとワークのバランス、そして働き方の形を大切にしていきたいですね。
 

前回記事「育児時短&在宅残業でメニエール病になった私が、副業を経て独立するまで」はこちら>>

 
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