横浜港に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス」号。 写真:古城 渡/アフロ

クルーズ船の中に感染者がいたという話や、感染が拡大している武漢から帰国したという話は目立ちますから、こうした人たちからの感染が気になるという気持ちはよく分かります。しかし、すでに身の回りにはたくさんウイルスが存在している可能性が高いという現実を考えると、目に見える形で感染が確認された人の隔離にばかり気を取られ、感情的になるのは考えものです。
 感染症の専門家の間では、水際で阻止するという手法にほとんど効果がないことは常識ですから、こうした隔離措置というのは、多分に政治的なものであるということを私たちは知っておく必要がありそうです。

 

水際作戦の効果は乏しく、国内ですでに感染が広範囲に拡大していると聞くと恐ろしくなってしまう人もいるかもしれませんが、今のところ、重症化したり亡くなってしまう人はごくわずかです。健康な人は過度に恐れる必要はないと考えられますが、一方で、高齢者や抗がん剤治療を行っている人、糖尿病に罹患している人など、免疫が弱い人は十分な警戒が必要ですし、周囲も相応の配慮をすべきでしょう。

では個人や企業としてはどのような対策を実施するのがよいでしょうか。

実は新型肺炎とは関係なく、日本では毎年インフルエンザでは3000人もの人が亡くなっています。つまり私たちにとって感染症対策というのは、すでに重要な課題となっているのです。通常のインフルエンザも新型肺炎も、基本的な対策は同じですから、普段のインフル対策がしっかりできていれば、新型肺炎の対策にもなります。

一般的に、ウイルスによる感染症は、飛沫感染と接触感染が主要な感染経路とされていますから、感染を回避するためには、人が集まっているところにはできるだけ行かず、他人と直接モノをやり取りすることを控えることが重要です。

満員電車での通勤や書類の受け渡し、ペンの貸し借り、大人数での会議はリスクが高いですから、可能な限り避ける工夫が必要でしょう。一部の企業では、在宅勤務や会議の中止、書類の受け渡しの制限(メールやファイル共有の推奨)などを行っているようです。また、不特定多数の人が触れるエレベーターやコピー機のボタンは非常に危険ですから、触れた後は、必ず手洗いを実施した方がよいでしょう。具合が悪くなった場合には無理に出社せず、自宅で療養するという方針を組織として徹底させることも大事です。

感染するかどうかは、すべて確率的に決まりますから、一回の行為を気にしてもあまり意味はありません。1日24時間の中でできるだけ上記を避ける工夫を凝らすという視点が求められます。

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