誰もノミネートされなかった女性監督


今年のオスカーは、「パラサイト」のノミネートや受賞を除けば、決して新時代的なものではなく、むしろ後退した感が否めない状況で授賞式の日を迎えました。
今年のノミネート候補には「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」「ハスラーズ」「The Farewell」など、優れた女性監督の作品が沢山あり、きっと一人は監督賞の候補に女性が名を連ねるだろうと期待されていたにも関わらず、誰もノミネートされなかったのです。特に作品賞にもノミネートされた「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」の女性監督グレタ・ガーウィグがノミネートされなかったことは、最後まで取りざたされました。俳優部門でノミネートされた顔ぶれを見ても有色人種が極端に少なく、今までダイバーシティを意識して会員を増やし続けてきたことが何の役にも立っていないのだと、落胆しました。女性監督問題に関しては、今後監督賞のノミネート数の上限を10に増やすことで、もっと多様化された候補者が入れる余地を作るとの議論まで持ち上がりましたが、今後どうなることか。見守りたいと思います。

女性監督グレタ・ガーウィグが手がけ、作品は衣裳デザイン賞を受賞。©「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」(3月27日劇場公開予定)
 


アカデミー賞は事前鑑賞をしているとより楽しい


今年のオスカーは偶然にも授賞式前に日本公開されていた作品が多く、しかもアジア映画である「パラサイト」が有力候補だったことで、興味を持って授賞式をご覧になった方がいつもより多かったのではないかと思います。作品を観ていなくても、ショーとしてアカデミー賞は十分楽しめるものだと思いますが、やはり作品鑑賞をしていて、思い入れのある作品がノミネートされていると、授賞式の楽しさは何倍にもなります。公開のタイミングは、配給会社の一存によるものなので、来年も同じような幸運に見舞われるかはわかりませんが、できるだけ今年のように作品鑑賞をしてのぞめたら良いな、と来年の授賞式にも期待したいと思います。
 

 

<書籍紹介>
『なぜオスカーはおもしろいのか? 受賞予想で100倍楽しむ「アカデミー賞」』

著者:メラニー 星海新書 ¥960(税別)

「アカデミー賞」ーその授賞式は万人を魅了してやまない極上のエンターテインメントショーであり、上質な映画作品との出会いに満ちた祭典。本書は、映画会社に23年間勤務しながら“オスカー予想屋”としてアカデミー賞の受賞予想をし続けてきた著者が、歴代の授賞式における名スピーチやハプニングなど選りすぐりのエピソードを紹介。さらに誰にでもできる受賞予想テクニックなども公開している。受賞作の予想を通して、アカデミー賞の魅力はもちろん、人種や性差別といった現在進行形のアメリカの社会情勢も透けて見えてくる一冊。



Ms.メラニー

アカデミー賞ウォッチャー。映画会社に23年間勤務しながら、1989年から30年に渡りアカデミー賞を見続けている会社員。アカデミー賞受賞予想がライフワーク。2017年2月にTBSラジオの人気カルチャー番組「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」(現在は「アフター6ジャンクション」)に“オスカー予想屋”として初登場。以来、アカデミー賞シーズンの風物詩ゲストとなっている。その的中率は驚異的で、2018年第90回アカデミー賞では、全24部門中21部門の受賞を的中させた。


文/Ms.メラニー
 

 


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著者一覧
 

映画ライター 細谷 美香
1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。

文筆家 長谷川 町蔵
1968年生まれ。東京都町田市出身。アメリカの映画や音楽の紹介、小説執筆まで色々やっているライター。著書に『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』(洋泉社)、『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、共著に『ヤング・アダルトU.S.A.』(DU BOOKS)、『文化系のためのヒップホップ入門12』(アルテスパブリッシング)など。

ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。男性俳優インタビュー集『役者たちの現在地』が発売中。twitter:@fudge_2002

メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。

ライター 西澤 千央
1976年生まれ。文春オンライン、Quick Japan、日刊サイゾーなどで執筆。ベイスターズとビールとねこがすき。

ライター・編集者 小泉なつみ
1983年生まれ、東京都出身。TV番組制作会社、映画系出版社を経てフリーランス。好きな言葉は「タイムセール」「生(ビール)」。18年に大腸がん発見&共存中。

ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『連続テレビ小説 なつぞら上』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。

 
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