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皇太子ご夫妻は「孤独な優等生」同士…雅子さまを支えた愛

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昨年、天皇陛下の即位に伴い皇后となられた雅子さま。年明けから年末にかけての一連の即位の儀式をみごとに行われました。思えばご結婚から25年あまりの間、適応障害などさまざまなおつらいこともありました。それらを乗り越えきたのは、ひとえに皇太子さま(現在の天皇陛下)の愛、そしてその愛を信じ続けるお気持ちでした。
朝日新聞やアエラの元記者で、雅子さまに関する記事を執筆している矢部万紀子さんの著書から、紐解いてみましょう。

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愛する感情を持ったから嫁ぎ、耐えてきた

 

ご婚約決定後の記者会見を終えたお二人。会見を終えてホッとされたような笑顔です。1993年1月19日、東宮仮御所にて。写真/JMPA

皇太子ご夫妻のご結婚について、雅子さまの意識は「転職」ではなかったかとこれまで何度も書いてきた。
「私の果たす役割は殿下からのお申し出をお受けして、皇室という新しい道で自分を役立てることではないか、と考え、決心した」という雅子さまの言葉から書いてきた。1993年(平成5年)1月、皇室会議で婚約が決まった後の会見での言葉だ。

 

だがもちろん、結婚は転職とはまるで違う。結婚には、前提がある。愛。人は普通、それなくして結婚はしない。

皇室会議の翌月、雅子さまの父・小和田恆(ひさし)さんと母・優美子さんが「文藝春秋」に登場した(1993年3月号)。雅子さまが皇太子さま(今の天皇陛下)からのプロポーズを受けると決断されたときのことについて、二人は以下のように語った。

〈雅子が「自分で殿下に直接お返事するつもり」だという形で私どもに申しました。「どういう風に申し上げるの?」と訊ねましたら、「それは秘密」と。ニコニコしながら「それは秘密」と申しましたから、これはお受けするという返事をしたいという意味だと分かりました。〉

29歳の女性の華やぐ心が見えるようで、こちらまで幸せな気持ちになってくる。この「お返事」を実際にした日のことを、雅子さまは皇室会議後の会見でこのように語った。

〈殿下に「本当に私でよろしいでしょうか」というふうにうかがいました。それに対して殿下が『はい、そうです』とお答えくださいましたので、少し長くなりますけれど、私の方から次のように申しました。
「私がもし殿下のお力になれるのであれば、謹んでお受けしたいと存じます。これまで、殿下には、いろいろたいへん幸せに思えること、うれしいと思えるようなことも言っていただきましたので、その殿下のお言葉を信じて、これから二人でやっていけたらと思います。お受けいたしますからには、殿下にお幸せになっていただけるように、そして私自身も自分でいい人生だったと振り返れるような人生にできるように努力したいと思いますので、至らないところも多いと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします』。このように申し上げました。〉
 

 

結婚の儀の10日ほど前に撮影されたツーショット。1993年6月、東宮仮御所にて。写真/宮内庁提供

同世代女子として、私なりに雅子さまの気持ちを解説するなら、「たいへん幸せに思えること」「うれしいと思えるようなこと」のところがポイントだと思う。「その言葉を信じて」承諾したというのが雅子さまの説明だが、それよりも「幸せ」「うれしい」と思えた「自分の気持ち」を信じて承諾したのだと思う。

いくら優しい言葉をかけられても、好きでない人からだったら心を動かされることはない。当たり前のことだ。雅子さまは皇太子さまの言葉に、「幸せ」「うれしい」と思えた。つまり、愛。
 

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