26日に発表された政府からの要請を受け、急遽3月16日までの休館を決定した東京国立博物館。翌日の27日には、さまざまな言語で休館を伝える注意書きが貼り出された。 写真:アフロ

忠臣蔵の主役の一人である大石内蔵助は、昼行灯(ひるあんどん:間が抜けていて、ぼーっとしていることのたとえ)などと呼ばれていましたが、主君が切腹に追い込まれると、突如、凄まじいリーダーシップを発揮し、仇討ちを成し遂げます。しかしながら、これはあくまでも物語です。実際の大石内蔵助は、城代家老という重責を担う立場であり、普段から高い成果を上げる卓越した人物でした。

組織を円滑に回すためには、普段の地味な仕事を着実にこなし、かつ、非常時にも卓越した行動力を発揮できる人を責任者に据えることが極めて重要になります。しかしながら、日本の組織はこうした人事にはなっておらず、どちらかというと普段の仕事さえしっかりできていれば、そのままリーダーになれてしまうケースが少なくありません。

残念ながらこれでは非常時にうまく組織は回らないのです。

 

新型肺炎に対する政府機関の対応が不十分なのだとすると、政府全体として、普段から準備が出来ておらず、かつ、非常時にもリーダーシップを発揮できる人材が責任者になっていない可能性が考えられます。このようなことを言うと、「今はそうした議論をしている時ではない」「政府を批判するのは秩序を乱す」といった批判が出てきますが、それは違います。

少し失礼な言い方になりますが、感情的になってこうした主張する人は、非常時に組織をマネジメントした経験がほとんどないのではないかと思います。組織が機能していないと判断される場合には、その時点からでもよいですから、リーダーシップを発揮できない責任者には退いてもらい、適切な責任者を据えることが極めて重要です。

米国は世界最強の軍隊を保有していますが、戦争がない時には、意外とのんびりした雰囲気で、年功序列に近い人事が行われることもあります。しかしひとたび戦争が始まると一気にモードが変わり、年齢や性別、学歴に関係なく、実力のある人物が指揮官に抜擢されるなど大胆な人事にシフトします。

もし今回の新型肺炎に対する政府対応に問題があるという場合には、私たちは遠慮なく声を上げることが重要ですし、各政府組織のトップに立つ政治家は、今からでも遅くありませんから、適切な現場責任者を据える決断を行うべきでしょう。国民の代表である政治家に求められているのは、こうしたリーダーシップなのです。

前回記事「新型肺炎でパニック寸前の日本人が、いま改めて知っておくべきこと」はこちら>>

 
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