先日のインスタライブは、着物家の伊藤仁美さんによる「大人の着物入門」をテーマにお届けしました。入学式や卒業式、結婚式など、フォーマルな場で着物を着たいと思っても、知らないことが多すぎて諦めたことはありませんか? そんな悩みを解決すべく、今回はフォーマルな装いのポイントを重点的に伺いました。早速、ご紹介してまいります。

川良編集長も着物姿で登場です。「いつもより緊張します〜」とのことですが、普段と変わらない笑顔と穏やかにゆっくりと話す編集長の雰囲気にとてもお似合いでした! 着物¥169000(袷仕立て代込み)、結城紬の名古屋帯¥159000(仕立て代込み)(Foglia)、帯締め¥7000、帯揚¥12900、草履¥18000/すべてTHE YARD

今回は着物がテーマということで、川良編集長も伊藤仁美さんに見立ててもらった着物姿で登場。仁美さんが編集長に用意したのは、色無地という柄の入っていない色だけの染めの着物。
光沢感のある素材に、シルバーグレーというクールな色でモード感を意識したそうです。そして、墨黒の地色に有田焼のお皿を文様に施した染めの名古屋帯をコーディネート。グレーの気配が残ったニュアンスカラーを合わせたことで、ワントーンコーデの装いになりました。

 

「普段のファッションで慣れ親しんでいる色を使うと、いつもの自分から離れることなく着物を楽しむことができます」と伊藤仁美さん。

着物も帯も、日ごろ着慣れているベーシックな色を選ぶと、着物のハードルはぐっと下がります。「着物だと気負わずに、ワンピース感覚で選んではいかがでしょう」とのこと。

落ち着いたシルバーグレーの色合いは、都会の風景にもよく馴染みそうですね。

仁美さんの装いはこちら。着物は色無地に見えますが……。着物¥209000(袷仕立て代込み)、名古屋帯¥49000、帯締め¥7000/すべてTHE YARD  帯揚、草履(ない藤)/共に私物

一方、仁美さんが着ているのは、川良編集長と同じ色無地のように見えますが、近くで見ると細かな柄のある型染めの江戸小紋という着物です。今回は西陣織の白地の名古屋帯を合わせ、軽やかな雰囲気に。これから訪れる春に相応しい着こなしは、さすがmi-molletの着物の先生です!

江戸小紋は近くでよく見ると、細かな型染めが施されています。

色無地はフォーマルなシーンから、お茶席や観劇などさまざまな場所に着て行くことができるため、呉服屋さんなどでもファースト着物としてすすめられることの多い万能の一枚です。
一方、江戸小紋は遠くから見ると無地に見えるのですが、よく見ると細かな型染めの柄が入っています。街着用といわれる「小紋」が名前についていますが、江戸小紋の中でも格の高い柄(鮫、角通し、行儀という柄)であれば、紋をつけて袋帯を合わせることで、フォーマルな場所にもOKな着物なのです。


​フォーマルは、着物ならではの約束事を楽しんで装う

着物の後ろ身頃の衿のすぐ下、背中心の部分に「一つ紋」を入れることで、着物の格を上げることができるのだそうです。

洋服では馴染みのない「紋」という言葉が出てきました。でも難しいことはありません。着物に紋を入れることで、格を上げられるという面白いシステムなのです。紋をつけることで、色無地も江戸小紋もフォーマルなシーンで楽しめるようになるのだそうです。

「カジュアルからフォーマルまで着まわしたいのなら色無地、江戸小紋をおすすめします。ただし背中に一つ紋を入れましょう」(仁美さん)

次は合わせる帯と小物について。フォーマルな装いには小物にもちょっとした決まりごとが。

色無地や江戸小紋には重厚感のある袋帯よりも、写真のような金糸も配色も控えめな白地の袋帯が好相性。季節感のない柄を選ぶと、一年を通して楽しむことができます。菊唐草の袋帯¥98000(仕立て代込み)/THE YARD  帯締め/私物

フォーマルな場での帯は袋帯といって、二重太鼓用の帯を使います。色や柄に重厚感があるものは、訪問着や付け下げという準礼装の着物向きなので、避けた方がベター。色無地や江戸小紋には、柄も色も少し控えめで軽やかな袋帯にすると相性がよいそうです。また、帯締めや帯揚は白や淡い色に、金銀があしらわれた華やかなものを合わせます。

草履もフォーマルには白や淡い色のタイプを選びます。マットな質感や、色のある草履はカジュアル向きになります。

草履も同様に、白や淡い色を選びます。さらに光沢感があって台が高いタイプにすると、よりフォーマル度はアップ。

仁美さんが普段愛用している鮫小紋の型押しレザーのバッグ。横長タイプなので、荷物もしっかりと収納でき、着物と合わせた時のバランスもよいそうです。「鮫小紋バッグ」¥83000/緙室 sen

バッグもやはり、フォーマルな装いには白や淡い色を。

フォーマルの小物は白や淡い色で、金や銀があしらわれた華やかなものを選ぶというのがポイントのようですね。


カジュアルな着物は「私らしさ」の範囲で楽しむ

仁美さんが、レセプションパーティや、夜のお出かけなどに使っているイッセイ ミヤケの「baobao」クラッチバッグ。ミラー加工された表面に光が反射し、モダンな輝きを放ちます。

フォーマルの装いにはルールがありますが、カジュアルなシーンではファッションとして着物を楽しんでよいのだそうです。

「今日の川良編集長の装いに合いますよ」と仁美さんが提案したのは、名古屋帯と同じようにグレーの気配が残るマットな質感の数寄屋袋。本来はお茶席で使う数寄屋袋ですが、クラッチバッグのように持ってもよさそうですね。「SUKIYA」¥48000/THE YARD

仁美さんが今回紹介しているバッグは和装用ではないものもあります。あまり着物ということにとらわれず、日常でも自分が使っているバッグを合わせると、「私らしさ」を残したまま着物を楽しむことができるそうです。

こちらも仁美さんの私物。友人とのランチなど、よりカジュアルなお出かけではチャームがたくさんついたハードな雰囲気のハンドバッグも愛用しているそうです。(左)「JUNK BAG」参考商品/gunda gallarey shop (右)「と革」のがま口バッグ/私物



実家に眠る着物は「色づかい」で現代に引き寄せる

実際に川良編集長の実家に眠っていた帯。帯の柄にグレーが入っていたので、シルバーグレーの色無地にもすんなりと馴染みました。

着物や帯を一式そろえるとなると、出費も覚悟が必要です。なるべくなら実家に眠っているものを使いたいのですが、おしゃれに着こなせるか不安になりませんか。

「例えば実家の帯を使いたい場合、帯の柄に入っている色と着物や小物の色を合わせ、使う色を極力抑えると、ファッション性の高い着こなしになります」(仁美さん)

こちらも川良編集長が実家から持参した帯。色無地などシンプルな着物に合わせ、帯締めや帯揚も色を抑えると都会的でおしゃれな着こなしになります。

また、帯締めや帯揚も含めてワントーンにすると、上品な装いになるそうです。

白地に金の織で古典柄があしらわれたフォーマル用の袋帯。「クリーム色やベージュの着物などを合わせ、同系色でまとめると大人の女性にふさわしい品のある着こなしになりますよ」(仁美さん)


いかがでしたか。フォーマルの決まり事を少し知るだけで、着物が身近に感じられたのではないでしょうか。より詳しい内容は、仁美さんが丁寧に解説してくれていますので、ぜひ動画をチェックしてください! 読者の方から寄せられた質問にも答えてくださっています。


今回の着物はすべて「THE YARD」さんにてお借りしました(一部私物を除く)。白シャツを着るように着物を着るというコンセプト通り、クリーンでモダンなものが多く、「ファッションとしての着物」を存分に楽しめます。開放的な店内は気軽に入れる雰囲気なので、着物初心者さんにもおすすめです。ぜひ一度、行ってみてください!

THE YARD
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前3-36-26
営業時間:11:30-20:00
水曜定休
tel. 03-5843-1063

<今後のミモレインスタライブ配信予定>

3月17日(火)20時~
山根さんをお迎えして「1000円以下のプチギフト」

3月24日(火)12時~
田中亜希子さんをお迎えして「大人のヘアアクセ」

の予定です。

ミモレのInstagramアカウント
@mimolletをフォローいただき、インスタライブから無料でご視聴いただけます。また、配信から24時間はストーリーにてアーカイブをご覧いただけます。

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【お問い合わせ先】
緙室 sen tel. 075-533-8144
gunda gallarey shop tel. 03-6805-0858
THE YARD tel. 03-5843-1063

撮影協力/enso@gunda gallarey shop
文/笹本絵里