いきなりBBCやCNNを聞いても英語力は上がらない


「英語をシャワーのように浴び続けると、いつの間にか英語が話せるようになる」という説があります。では、テレビでBBCやCNNを流しっ放しにすれば、ある日突然意味がわかるようになるのか、といえば、残念ながらそんなことはありません。「Hello」と100万回繰り返しても英語力は伸びません。逆に小学生相手に家庭でBBCやCNNを流しっ放しにしてもやはり英語力は伸びないでしょう。

意味がわからない英語をいくらシャワーのように浴び続けても、英語は永遠に話せるようにならないのです。それは、お経を聞くのと同じ。僕らは何度もお経を聞く機会はあったはずですが、「南無妙法蓮華経……」の先は言えません。意味を知らないからです。
インバウンドの急増で日本にいながらにして中国語や韓国語を耳にする機会がこれだけ増えたのに、僕らはいまだに「ニーハオ」や「アニョハセヨ」くらいの中国語や韓国語しか話せません。意味がわからないまま、ただ聞いているだけだからです。

 


英語学習で効果的なのは、「意味のわかる内容」で学ぶこと


僕自身、英語力のメンテナンスのためによく利用しているのは、たとえばYouTubeの外国人向けの日本の紹介コンテンツです。

「internationally ME」

僕が好きで通勤時間に観ているのは『internationally ME』という動画チャンネル。ニュージーランドで育ち、現在は日本在住女性のチャンネルです。彼女は英語の発音がキレイですし、内容は、外国人向けの日本の観光地ガイドなので、日本人の僕には当然頭に入りやすい。BBCでアフリカ難民や中東紛争の話を聞くよりも、よく知っている日本の話の方が理解しやすく、英語も頭に入りやすいのです。

意外に知られていませんが、YouTubeには字幕機能があります。何を言っているのかわからなかったら、字幕機能をオンにして意味を理解します。それから字幕オフで聞くと、意味がわかって英語が頭に入ってきます。

小さいお子さんでしたら、アメリカの子ども向けのテレビアニメシリーズを観るのもよいでしょう。『The Powerpuff Girls(パワーパフガールズ)』や『Teenage Mutant Ninja Turtles(ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ)』など、YouTubeで観られる番組もあります。
「YouTubeで学習?」と眉をひそめる方もいらっしゃるかもしれません。けれど、今の小学生は生まれたときからインターネットとスマホがあるデジタルネイティブ。それどころか生まれたときから動画が身近にある「動画ネイティブ」です。AI時 代とは、常識がコロコロ変わる時代。大人の常識は子どもの非常識です。

デジタルネイティブで動画ネイティブの子どもたちは、動画で遊ぶだけではなく、学ぶのが当たり前です。そんな動画ネイティブ世代の常識がピンとこないと、子どもがスマホでYouTubeを観ていると「何しているの! 早く勉強しなさい!」と𠮟ってしまいがち。これでは、せっかくの英語を学びたいという子どもの気持ちも、しぼんでしまうかもしれません。
もちろん従来の参考書型学習も良い点はあるのですが、動画には動画の良さがあります。参考書は自分のスピードで読みますが、動画は動画が流れるスピードで聞かなくてはなりません。英語の学習という意味では、「わからない部分があっても止まらずに聞き続ける」ということは効果的です。全体像を理解するという意味においては、動画の方がいい場合もあるのです。
英語の勉強は教科書や参考書を開いて黙ってするもの。まずは、そんな僕らの常識を捨てましょう。

 

『世界トップティーチャーが教える 子どもの未来が変わる英語の教科書』
著者:正頭英和(講談社/税込1650円)


2019年、「教育界のノーベル賞」と呼ばれる「Global Teacher Prize 2019(グローバル・ティーチャー賞)」トップ10に選出された筆者が、AI時代を生き抜く子どもたちが“真の英語力”を身につけるためのコツを伝授します。


構成/小泉なつみ

第2回「【世界TOP10入り教師直伝】家庭でできる最強の英語学習法」は3月25日公開予定です。

 
  • 1
  • 2