自分から動くことで、突然のショー中止を別のチャンスに

 

そして、2018年から再び俳優業に復帰し、26歳で『リュウソウジャー』に出演。一般的な物差しで言えば、遅咲きのヒーローですが、岸田さん自身は「今このタイミングがベストだった」と胸を張ります。

 

「たぶんもっと若い頃に特撮ヒーローでメインキャストをやっていたら、間違いなく潰れていた。それはこの1年間ずっと感じていました」

休業中の間に身につけた発信力。その言葉を証明するように、ベストスコア73というゴルフの腕を活かし、最近ではゴルフ専門誌でも活躍。さらに、この3月にはかねてより親交の深いYouTuberの東海オンエアの動画に緊急出演。210万回再生を記録(2020年3月22日時点)するなど大きな反響を呼びました。

 

「新型コロナウイルスの影響で『リュウソウジャー』のショーが中止になってしまって。急遽スケジュールが空いたことから、彼らのところに訪ねたら、『動画に出ない?』って誘われて。これはチャンスだなと思って、マネージャーに連絡して、その場で出演を決めました」

昔の自分なら、ただ腐っていただけの待ちの時間。それを好機に変えられたのは、今までの経験があったからでした。さらに共演してみることで、YouTuberの圧倒的な影響力を体感したと言います。

「本当にすごいですよ、彼らのコマーシャル能力は。今は、自分たちが本心から面白いと思うことをやっていないと、簡単に嘘が見破られる時代。役者もセルプロデュース能力が大事なんだなと実感しました」


菅田将暉になれなくても、岸田タツヤにしかできないことがある

 

また、高級セレクトショップ『Edition』で販売のバイトをしていた経験も。もともとファッションに無頓着だったそうですが、そのバイト時代に月間1000万円以上の販売実績を叩き出し、売り上げ1位に輝きました。

「一度、そのお店で誰も売ったことのない100万円のジャケットを売ったことがありました。バイトで100万円のアイテムを売ったのは僕が初めてらしくて。本社の人が来て、『社員になってください』って誘われました(笑)」

聞けば聞くほど、面白エピソードが続々と飛び出してくる岸田さん。菅田将暉さんや山崎賢人さん、本郷奏多さんら同世代の俳優とも仲が良く、一時期は菅田さんとほぼ一緒に住んでいるような生活だったそう。これだけ多くの俳優仲間に愛されるのも、岸田さんに人間的な魅力があるからこそ。同世代の俳優たちにもリスペクトの気持ちを欠かしません。

 

「それこそ昔は売れていく同世代の仲間たちを見て焦る気持ちもありました。本気で菅田将暉のことをすごいと思っていたし、役者なら全員が彼のポジションを目指すべきだと思っていた。でも、実際はそうじゃないのが役者の世界。スターにはなれなくても、名脇役の道が合っている人もたくさんいる。それぞれ自分の役割があるんだと理解できるようになってからは、焦りや悔しさはまったく感じなくなりましたね」

だからこそ、戦隊ヒーロー出身という大きなブランドを得た今も、決して舞い上がった様子は見せません。むしろ虎視眈々と自分の進むべき道を見据えているようです。

「今の目標は、『リュウソウジャー』で僕を見つけてくれたお母さん方が楽しんでくださるような大人の刑事モノに出ること。そこで、若手の刑事役がやりたいですね。うちの母親もよく言ってくるんですよ、『タツヤは主演を張っちゃダメ。主役は他の人に任せて、その近くでいつも走っている若手の刑事の役をやりなさい』って(笑)」


27年の人生の中で積み上げた経験値とユーモア。自分の見せ方を心得た明晰な戦略思考。そして一心に磨き続けた役者としての技量とタフネスさ。それらのすべてを武器に、岸田さんはこれから自分だけの道を切り開いています。若き名バイプレイヤーとしてその名を轟かせる日も、そう遠くないかもしれません。
 

「トワとの最後のシーンで、1年間の集大成を出せた」
リュウソウジャーの仲間へメッセージ


『リュウソウジャー』の話になると、表情からいとしさが溢れ出る岸田さん。特に、同じ仲間として駆け抜けた5人の共演者に対する愛情は格別です。そこで、ひとりひとりへの想いを聞きました。まずはコウ/リュウソウレッド 役の一ノ瀬颯さんについて。

「一ノ瀬は真面目で、芯が通っている人間です。真ん中に立つ人間にしかないものを彼はちゃんと持っている。一ノ瀬を見て、自分は主演の器じゃない、5番手6番手をしっかりやっていこうと思えたぐらい、彼は主演として堂々と僕らの真ん中に立ってくれました」

次は、メルト/リュウソウブルー 役の綱啓永さんについて。

「綱は稀に見る面白い人間です(笑)。あんなに面白くて、感情の沸点が低くて、穏やかな人間は見たことがない。きっとバラエティとか、福田雄一監督の作品に出たら、ものすごいことになるんじゃないかとひそかに思っていて。ある意味でいちばん今後が怖い存在です」

次は、アスナ/リュウソウピンク 役の尾碕真花さんについて。

「実はオールアップのときに6人の中で唯一泣かなかったのが真花なんですよ。それぐらいブレない強い心を真花は持っている。それは、この厳しい芸能界でやっていく上ではすごく大切なもの。現場の誰よりも男らしくて、肝が据わっていて、素晴らしい女優さんです」

次は、カナロ/リュウソウゴールド 役の兵頭功海さんについて。

「兵頭は、血液型が一緒だったり、誕生日が1日違いだったり、今まで生きてきた境遇が近いんです。初めて会ったのは映画の撮影のときで、よく夜中まで一緒に語り明かしました。僕が彼の年齢のときにできなかったことを、彼はできている。そこがすごいなと思います」

そして最後は、トワ/リュウソウグリーン 役の小原唯和さんについて。兄弟役を演じた小原さんには、ひときわ特別な感情があると言います。

「弟に対しては何て言っていいか難しいんですよね。人前でいいことを言うような間柄でもないし、むしろ活を入れた方が褒めている感覚になる(笑)。ただひとつはっきり言えるのは、この1年で最も成長したのは小原。最初の頃はNGも多くて、それに僕が付き合う感じだったんですけど、最後の方では小原からこういうことをやりたいって演技プランをどんどん出すようになって。最終回でトワが僕をつねったりするのも、全部小原のアイデア。あそこで1年間の集大成を出せたなと思いました」
 

 

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岸田タツヤさんのインタビューアザーカットはこちら>>

撮影/Junko Yokoyama ( Lorimer management+ )
取材・文/横川良明
構成/片岡千晶(編集部)
 
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