シンプルで都会的なパリのリアルクローズ、ポルダー。

毎年春になると登場する、私がこよなく愛するアイテムがある。パリのお気に入りメゾン・ポルダーPolderの、グリーンのレオパード柄のコートだ。

前々回の「スタッフの今日のコーデ」で着用し、ミモレッタさん達に沢山沢山褒めて頂いたから、どうしてもショップスタッフのオドレイさんに報告がしたかった。

もう十年も通い続けているブティックに、百点満点を取った答案をお母さんに見せたい子供の様な気持ちで、意気揚々と向かった私。

「スタッフの今日のコーデ」3月7日号も併せてご覧下さい♡

あれ?
軽やかな春物のディスプレイを邪魔する不自然なポスターが、ウィンドーにデカデカと貼ってある。 « 貸店舗 »を意味する« A LOUER »という文字と共に、不動産屋さんの物と思われる電話番号。ふと、嫌な予感がよぎる。

奥に辛うじて見えるのが素敵な素敵なマダム・オドレイさん

いつもの様に、オドレイさんが奥で作業をしている姿が見えてホッとしたのも束の間、彼女の口からは悲しいお知らせを聞く事になる。

「Hiroko ! 嗚呼良かった、あなたには会っておきたかったから。ブティックをね、今月末で閉める事にしたの。春物は一応立ち上がってはいるけれど、例年よりアイテムはグッと少ないでしょ。今後暫くポルダーは、オンラインショップのみで継続される事になる。残念だけれどね。」

――嫌な予感が当たった。
子供服やらインテリアにまで活躍の場を広げ、メルシーやSmallableをはじめとするパリの主要セレクトショップには必ずコーナーがあったし、去年はモノプリとのコラボなんかもやっちゃって、凄いなぁ。ポルダーは飛ぶ鳥を落とす勢いだ、なんて思っていたのに。どうして?どうして?

モノプリとのコラボで、インテリアグッズを展開。それはそれは素敵だった。全部欲しい!

――そうねぇ、何でかしらねぇ。最終的にはクリエーターのマデロンとナタリーが決断したんだけれどね。彼女達も私も、何だかひと休みしたくなっちゃった、ってところかしら。同時に、何か違う事をやりたくなった、というのもある。心配しないで!ポルダーは無くならない。でも今後、何か新しい形で生まれ変わるのかもしれないわね。

エルメスでキャリアを磨いた後、姉妹でポルダーを立ち上げたマデロン(左)とナタリー(右)。デザイナーである彼女達が一番似合う、パリシックお手本の着こなし。

ブランド設立から二十年、今や後期ミモレ世代になったマデロンとナタリーの私生活にも変化があったのだろうし、ファストファッションが占拠し、ECサイトが圧倒するファッション業界のスピード感に、ポルダーの様な職人気質のアトリエは、辟易としていたんだろうな。

ね、このコート覚えてる?と「今日のコーデ」を見せる私。
――もちろん!懐かしいわね、ポルダー初期の頃の作品。良い時代だったわねぇ。あなたに良く似合っていた。

ブティックが無くなる前に、最後のショッピングに来るわね!と固い約束をし、店を出た。

20SSコレクションのメインとなるテキスタイルはイタリアの大理石のような色合いだ。シャツやワンピースに展開中。

私の小さなワードローブを開くと、大切なお洋服達が所狭しと並んでいる。それぞれを見ると、デザイナーさんやショップスタッフさん達の顔が思い浮かぶ。

彼らはあくまでも友人ではない。ただの知り合いで、名前以外は連絡先も知らない束の間の間柄だけれども、想いはこうして洋服に宿ったまま、いつまでも消える事は無い。

オドレイさんに褒めてもらったレオパード柄のコートがひときわ愛おしく、優しく撫でてから、そっと扉を閉めた。