「推しが見てるで」その言葉が、怒りを無効化する


ただ、突然跳ね上がる怒りのボルテージには、推しの画像や動画では間に合いません。思わずキレそうになったとき、どう対処するか。私の場合、「推しが見てるで」。このワンフレーズを頭に思い浮かべるようにしています。

小さい頃、よくおばあちゃんに「悪いことしたら神様が見てるで」と言い聞かせられたものですが、大人になった今、神様の天罰より推しに嫌われることの方がよっぽど怖い。

顔を真っ赤にして怒鳴り散らしている自分なんて、万が一推しに見られたらお嫁に行けない、もとい現場に行けない。さして褒められたところのない僕ですが、せめて推しに恥ずかしくない自分でいたいのです。

 

この「推しが見てるで」は何かと使えるキラーフレーズ。たとえば、SNSをやっていると、よく知らない人からの無神経なリプライやコメントに思わず口汚く言い返したくなること、ありますよね? だけど、それをしてしまっては同じ穴のムジナ。もしそんなツイートを推しが見ていようものなら、アカウントの前に僕の心肺が凍結します。

 

日頃の不満や鬱憤をついネットに吐き出したくなったときも「その悪口を書いているときの顔、推しに見せられる?」と問うてみれば、罵詈雑言も雲散霧消。あらゆるネガティブな感情を無効化する推し、これが本当のムーンヒーリングエスカレーションでは? だとしたら、僕、全力で「リフレーッシュ!」って叫びます。

むかつく上司も「もしかしたらこの人、推しのお父さんかも」と妄想してみてください。あの推しをこの世に生み育ててくれたと思えば、多少の無神経は何のその。とりあえず年の暮れには和牛商品券でも贈ろうかという気持ちになります。

年をとるほどに前頭葉が衰え、気が短くなるのは、抗えない肉体のさだめ。だけど、自分の不機嫌をあからさまに出していいのは乳幼児まで。特に大人になってからは、自分の機嫌は自分でとるのが礼儀です。

しかも推しを公言する以上、自分のちょっとした振る舞いが推しの評判を下げることにもなりかねません。ファン自らがいつもご機嫌でいることが、ひいては推しのイメージアップになると思えば、ゴミも拾うし、席も譲る。そうやって徳を積むことで、入手困難なチケットの当選確率が上がるなら、献血もするし、エレベーターに乗るときは率先して操作盤の前に立って「何階ですか?」って聞きますとも!

つい気持ちが荒みがちなこの時期だからこそ、自分で自分をハッピーにする方法を身につけておきたいもの。いつも心に推しを浮かべて、負の感情をしっかりコントロールしましょ〜。

前回記事「あの日“推し”に出逢って、僕の人生は変わった 」はこちら>>

「推しが好きだと叫びたい」連載一覧
第1回:あの日“推し”に出逢って、僕の人生は変わった
第2回:荒みがちな心を癒すのは“推しのいる生活”
第3回:ドラマ『恋つづ』から考える、推しのラブシーン問題
第4回:自粛生活では新たな推し=生きる燃料。朝ドラ俳優・窪田正孝の底知れぬ魅力
第5回:こじらせてると解ってる、でも言いたい「推しに認知されたくないオタク」の本音
第6回:「推しの顔が好きすぎて語彙力死ぬ」問題をライターの僕が本気で考えてみた【ライター横川良明】
第7回:やっぱり顔が好き!顔から推しに堕ちたオタクを待つさらなる落とし穴【ライター横川良明】
第8回:SNSで話題の史上最強沼・タイBLドラマ『2gether』の素晴らしさを語らせてくれ
第9回:ナイナイ岡村の炎上騒動から考える「長く愛される推し」に必要なモノ2つ
第10回:転機は高橋一生だった。推しの肌色面積問題、着てる方が好きなオタクの意見
第11回:オタクの心の浄化槽。男子の“わちゃわちゃ”が今の時代に求められる理由
第12回:推しが好きだと叫んだら、生きるのがラクになった僕の話

 
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