どんなボケ方をするかは予測不能


ただし、ボケにも個人差があります。たとえば、解剖した脳には明らかにアルツハイマー型認知症の所見が出ているのに、生前はそれほどボケたように見えなかった人がいる一方で、生前はひじょうにボケが進んでいたにもかかわらず、解剖してみると、脳自体にはそれほどの変化が見られなかったという人もいるのです。

 

どのようなボケ方をするのか。正直、だれにもわかりません。

そうであるならば、認知症をいたずらに恐れたり、「絶対にボケるものか!」と気を張ったりして生きるより、「認知症になったらそのときのことだ」とどっしりかまえて生きたほうがいい。私は、こんなふうに思っています。

ただ、気楽にかまえて生きるにしても、認知症に対する正しい知識は持っておいたほうがいい。そうすれば、ムダに怖がることもなくなるでしょう。
認知症になっても愛される人がいる。幸せなボケの人もいる。
こうした事実を知るだけでも、気持ちがラクになったりします。
長生きをすれば人はボケるもの。このことを素直に受け入れ、「どうせなら愛されるボケになろう」と腹をくくれば、気持ちがリラックスします。そのことが、結果としてボケを遅らせたり、ボケたとしても幸福な人間関係を築いてくれることもあるのです。

そう考えると、認知症に対する不安が軽くなってきませんか。
不安が払拭されてゆったりした気持ちになると、感情が安定します。感情の安定は、いまを楽しく生きることにもつながりますから、一石二鳥です。

 

『「ボケたくない」という病』
著者:和田秀樹(世界文化社/税込1,320円)


「ボケずにすむ方法はありませんか」「認知症になると人に迷惑をかけますか」「認知症のサインを教えてください」――。そんなボケに関する基礎知識から、認知症になった後に必要な手続きといった超実践的な情報、さらにはボケを遅らせる対策まで、ボケを恐れないための秘訣が詰まった一冊です。
 


構成/小泉なつみ

第2回「認知症の始まり?『物忘れ』と『認知症』、見分けるポイントは『記銘』と『想起』」は4月12日公開予定です。