【帰宅後】手洗い、マスク外しの手順


医療従事者は診療が終わると、病室を出る前ないし病室の前室があればそこで、個人防護具を脱ぎます。汚染を病室の外に広げないようにするためです。

個人防護具を外す時、汚染が強いと考えられるところから順番に外していきます。まずは患者さんに触れる手袋を、手袋の外側を素手で触れないように外していきます。そして手袋を捨てたあと、一度手指消毒をします。

その後、患者さんの飛沫で汚染された可能性の高いフェイスシールドを外し、再度手指消毒をします。

次に、ガウン・エプロンを外します。この際にもガウンの外表面に触れないように、内側だけに触れながら外していきます。ガウンは丸めて捨てたあと、さらに手指消毒を行います。

最後にマスクを外します。マスクを外す際には、マスクの前面は汚染されている可能性があるので、必ず耳かけのところにだけ触れて外し、前面を触らないように捨てます。その後さらに入念に手洗いを行い、完了です。

皆さんは個人防護具を着ているわけではないですが、これを衣服に例えることができるかもしれません。さすがに玄関の外で衣服を脱いだりすることはできませんから、玄関を前室と見立てます。

あらかじめ断っておきますが、人との接触がなく外で散歩をしてきただけであれば、ここまでする必要はなく、よく手洗いをするだけでもいいでしょう。ウイルスが誰もいない外気の中で漂っているわけではないのですから。あくまで外で誰かと接したらということです。

まず、玄関にアルコール消毒液と上着をかけるラック、ゴミ箱を設置しておくと良いかもしれません。自宅に帰ったら、まずアルコール手指消毒を行います。玄関近くに手洗い場があるのであれば、自宅の他のものに触れないようにして手洗いをしていただくのでも大丈夫です。

その後、上着や手持ちのカバンをラックにかけます。かけたあと、再度手指消毒を行います。そしてマスクを装着していれば耳かけから外し、前面に触らないようにしてゴミ箱に捨てます。布マスクであれば、洗いに出します。その後入念に手洗いをして完了です。

これが1日の終わりなら、そして人との接触がたくさんあったなら、そのまま全ての衣服を洗濯機の中に放り込み、シャワーを浴びてからリビングルームに戻るのも良い方法かもしれません。衣服は洗濯機にかければ十分汚染を洗い落とすことができます。

かけた上着に付着したウイルスは時間とともに減っていきます。衣類などでのウイルスの存続時間は数時間と言われます。風通しの良いところなら、さらに早く減るかもしれません。いずれにせよ、このようにウイルスを減らすために「時間」も活用することができます。物に付着したウイルスは時間とともに減っていくのです。もちろん、上着はアルコールスプレーを吹きかけることでも消毒はできるでしょう。

また、もし外で携帯電話を触ってしまったら、携帯電話の表面もアルコールワイプなどで消毒しておくと、よりリスクを低減することができます。

帰宅したら
手指消毒
耳の部分を持ちマスクを外す
上着は玄関につるす
手洗い、うがい


“Stay Home”の大切さ


繰り返しになりますが、ご紹介した内容は、リスクを「ゼロ」にする方法ではありません。リスクを限りなくゼロに近づけるためには、国や地方自治体の要請に従って、自宅にとどまる必要があります。自宅にとどまれば、人との接触はなくなるでしょう。

 

実際に、医療機関でも、病室に電話やタブレットを置き、それらを通してコミュニケーションを取るようにするなど、医療者と患者の接触をなるべく減らす取り組みが行われています。いくら感染防御をしていても、接触はリスクになるからです。

各報道では、マスクやアルコールを手に入れるために行列ができているとの話も聞きますが、それでは本末転倒です。マスクやアルコールを手に入れる以前に、その行列こそがリスクだからです。出かけなければ、そもそもマスクもアルコールも、必要がないのです。

しかし、どうしても避けられない外出もあると思います。気分転換も必要だと思います。そんな時、ご紹介したような取り組みをできる範囲で行なっていただくことで、ご自身のみならず同居のご家族をも、不要な感染機会から守ることができます。

あまり神経質になりすぎる必要もありませんが、これまでの日常生活を振り返って、まだできそうなことがあったかもしれません。これを機会に一つでも取り入れていただくこと、小さな取り組みの積み重ねが、あなたとあなたの身の回りの方のリスクを減らすことにつながります。

身の回りに広がる感染リスクとその減らし方を、今一度見直してみませんか。
 

前回記事「【コロナかなと思ったら?の疑問に医師が回答】家庭や職場で体調が悪い人が出たら、どうすればいいのか?」はこちら>>

イラスト/杏乙
 
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