それは、「私たちの住む現代の家は狭い」という問題です。 
住まいの地域差は、年々拡大しています。 

イメージしていただければかんたんに想像がつくことと思いますが、じつは東京都の住宅面積の平均は、茨城県の平均住宅面積の3分の1もありません。
「片づかない部屋」は、自宅の収納量と、持っているモノの量の差によって生まれます。当然、物理的にモノの量が少なければ少ないほど、かんたんに片づくようになります。

つまり、都市部に住むモノを愛する方のほとんどが、「モノは捨てたくないけれど、快適な暮らしも送りたい」というジレンマに悩んでいることになります。 
実際に私自身、モノを捨てることに人一倍抵抗があり、「捨てること」をすすめる片づけ本を読むたびに、暗い気持ちになっていました。 

 

というのも、私は幼少期を茨城県、中高生時代を宮城県のモノがあふれる家で過ごし、「モノを愛する気持ちは、美しく豊かである」という価値観を持ち、生きてきたからです。 

父の部屋には、山のような本と、世界中から集めた工芸品が置かれていました。分厚い専門書に囲まれて書斎に向かう父の姿には、いつも憧れと尊敬の念を抱いていたものです。母はモノづくりが得意で、さまざまなモノを自分で手づくりし、季節の行事や来客時には、いつも張りきって家中を飾りつけていました。 
そんな実家は、確かにモノが多くて、いつも片づいているとは言い難いのですが、幸せにあふれていて居心地がよく、私や家族にとって唯一無二の空間でした。 

このように、自分自身も含め、さまざまな人の、さまざまなモノへの愛のかたちや、現代人が直面する家の狭さに関するデータに触れる中で、「住まいを理由に、モノへの愛をあきらめないでほしい」という一心で、整理収納アドバイザー1級の資格をとり、「モノを愛してやまない人」を対象に、片づけのお手伝いをしてきました。 
多くの趣味や偏愛を持つ方々の自宅を多く訪問し、モノへの愛を守りながらスッキリした部屋をつくる方法を模索しつづけています。