『熱源』はぜひ宝塚で舞台化を願う!

 
『熱源』
<あらすじ>
明治維新から第二次世界大戦が終わる頃までの、樺太アイヌ。同化政策のもと、民族的アイデンティを揺るがされた二人、日本人にされそうになったアイヌ・ヤヨマネクフ(山辺安之助)と、ロシア人にされそうになったポーランド人・ブロニスワフ・ピウスツキの物語。
 

渥美:続いて第5位、川越宗一さんの『熱源』は、タイトル通りめちゃくちゃ熱い話ですね。「熱源」とは、「ふるさと」のことなんですね。アイヌは日本によって、ポーランドもロシアによって、アイデンティティを脅かされるんだけど。その「ふるさと」へ思いという熱を持って、命がけで守ろう、世の中を変えようとする男たちの物語ですね。

バタやん:その熱さに、私なかなかちょっと気持ちがついていかなくて、正直に言うとまだ読み終わってないです。が、漫画化、アニメ化とかして欲しい。こういうと下世話だけど “軍服萌え”もあって、宝塚の舞台にもなってほしい。

渥美:宝塚、いいこと言う! 恋のお話もあるし、夫婦の話も出てくる。みんなかっこいいし、大河ドラマとかね向いてますね。まずはコミカライズをぜひお願いしたい!
 

江戸川乱歩の“怖面白さ”に夢中になった頃を思い出す『medium霊媒探偵城塚翡翠』


渥美:6位は、相沢沙呼さんの『medium霊媒探偵城塚翡翠』。これはバタやん、どうでした?

 
『medium霊媒探偵城塚翡翠』
<あらすじ>
推理作家の香月史郎(かづき しろう)と、霊媒であり死者の声を伝えることのできる城塚翡翠(じょうづか ひすい)の二人で、姿なき連続殺人鬼による事件の解決に挑む。
 

バタやん:江戸川乱歩の明智小五郎以外のノンシリーズものってあるじゃないですか。『白昼夢』とか『人間椅子』とかね。怖い、怖いけど面白い。ドキドキワクワクして夢中になって読んでた、小学校高学年くらいの頃の感覚を思い出しましたね。表紙のこの絵、元欅坂46の平手友梨奈ちゃんにしか見えなくて。私、平手友梨奈ちゃんの大ファンなんですよ。この本、弊社刊だから、会社の入り口にポスターが貼ってあるんです。毎朝、「てち〜!おはよう!」って心の中で思ってます。(本作と関係ない話ですみません……!)


女性に対する“ルッキズム”や“役割”問題に挑んだ川上未映子さん渾身の作『夏物語』

 
『夏物語』
<あらすじ>
大阪の下町に生まれ育った夏子は、38歳となりパートナーなしの出産を目指す。夏子は、精子提供で生まれ本当の父親を探す逢沢潤と出会い、心惹かれていくが……。

バタやん:ミモレでも川上未映子さんにインタビューしましたね。『夏物語』の一部は『乳と卵』のセルフリブースト、二部は続きのようになっていますね。渥美さんはどう読まれました?

渥美:『乳と卵』では「豊胸手術」と「月経」といった女性性への嫌悪感をテーマに描き、今回は、「A I D(非配偶者間人工授精)」という生殖倫理をテーマにしてますね。ページボリュームかなりあって、まさに川上さんの渾身の作品。『流浪の月』を読んだときに、『夏物語』と似てるなと思ったんです。

バタやん:そうおっしゃってましたね。2つの作品のどこが似てるのかちょっとわからなかったんですが……。

渥美:恋愛を性的な関係に帰着させないといいうか、“ルッキズム”のような女は男に性的に欲情される相手でいなくてはならないということへの疑問だったり、「配偶者」「パートナー」という概念への疑問。それからこの逢沢潤の中性的でフラットな感じとか、恋人が別にいるところとか、『流浪の月』の文くんと重なる部分が多い気がしました。

バタやん:なるほど。おお、喋りすぎてちょっと時間がなくなってきました(インスタライブ配信の上限時間は1時間)ので、残りの作品を駆け足でいきますね。


極上のエンタメ作品『ムゲンのi』『店長がバカすぎて』『むかしむかしあるところに、死体がありました。』

 

バタやん:知念実希人さんの『ムゲンのi』は、医療ミステリーとファンタジーの掛け合わせです。上下巻あって、かなりボリューミィですが、このダークファンタジー的な世界観に入り込めると一気にいけると思います。

『ムゲンのi』
<あらすじ>
主人公の識名愛依は、眠り続ける謎の奇病「イレス」の患者3人を受け持つ神経内科医。頻発する猟奇的殺人と患者のトラウマに関係性があることに気付いて……。

バタやん:早見和真さんの『店長がバカすぎて』は、本屋さんを舞台にしたお仕事小説。“書店員あるある”なのかなと思われるエピソードがいっぱい出てくるのですが、これが書店員さんの選ぶ「本屋大賞」に選ばれたってことは、かなりリアルなんだろうな〜と。そこが面白いと思いました。早見和真さんは『イノセントデイズ』とかは重くズーンとくる作品なので、こういう人情コメディも得意なんだなあと思って。

『店長がバカすぎて』
<あらすじ>
〈武蔵野書店〉吉祥寺本店の契約社員の谷原京子、28歳。<非>敏腕店長のもと、日々起こるトラブルに対処しながら忙しく働いている。ある日、憧れの先輩書店員・小柳真理さんから店を辞めると打ち明けられて…。
 

バタやん:そして第10位、青柳碧人さんの『むかしむかしあるところに、死体がありました。』は、誰でも知ってる昔話をモチーフに、ちょっとシニカルに描いたパスティーシュ小説ですね。私、昔、清水義範さんのパスティーシュ小説が大好きだったんですよ。それを彷彿とさせました。誰でも知っているストーリーがあるから、すっと入っていけるっていうね。

渥美:ステイホームなこういう時に読むのにぴったりだね。

『むかしむかしあるところに、死体がありました。』
<あらすじ>
桃太郎や一寸法師って、え?そうだったの?となる昔話×ミステリー。