シナリオ3/だらだらと感染流行が続く

 

最後のシナリオは、そもそも今回のような大きな波は来ずに、じわじわと感染が広がり続け、季節が変わっても特に大きく増えも減りもせず、だらだらと感染流行が続くというものです。

この場合、「緊急事態宣言」のような対策は必要なくなるかもしれませんが、持続的に感染者や死者が出続けるということが予想されます。このシナリオは過去のインフルエンザがとったことはありませんが、COVID-19ではまだ起こりうることだと述べられています。

 


いつまで続くのか


いずれのシナリオを辿るにせよ、今夏まで現在の「緊急事態宣言」を持続するという必要はないのかもしれません。しかし、「集団免疫」が完成するまで、1年半から2年ほどは断続的な大きな感染流行を見込んでおかなければならないと推測されます。感染の被害が大きく悪化すればするほど短期間で収束することになりそうですが、その代償は計り知れません。

そして、集団免疫ができた後は、人の中で少しずつ循環し続け、今ある風邪のウイルスのように季節性をとり、軽症な感染症になっていくことが予想されます。このため、このコロナウイルスの流行は「永遠に続く」とも言えますが、未来にはだいぶ軽くなり、現在のような警戒は必要がなくなるので、「戦いは永遠には続かない」とも言えます。

いくら未知のウイルスであり、どれほど免疫ができるのか分からないと言っても、インフルエンザであれ、SARSであれ、MERSであれ、免疫ができること自体に疑いの余地はありません。これは新型コロナウイルスでもほぼ間違いないと言っていいでしょう。その免疫の持続性は、数ヵ月から数年程度と予想に幅があります。が、仮に免疫が感染自体を防がなくなったとしても、再感染の時の症状を軽くする程度の免疫は、比較的長期間働く可能性が高いと考えられています。

ここで注意が必要なのは、ご紹介したシナリオは、あくまでワクチンが手に入らなかった場合のものであるということです。ワクチンの臨床試験が進んでいるとはいえ、有効で安全なワクチンが入手できるかは未知数であり、このような想定をしておくことは大切です。

一方、2009年のパンデミックインフルエンザでの経験は、ワクチンが人を助けてくれる可能性も教えてくれます。この時のパンデミックでは、第1波から6ヵ月後に米国でワクチンが入手できるようになり、これによって、70万人から150万人の感染を防いだと試算されています。

もし有効なワクチンが手に入れば、感染を起こすことなく「集団免疫」が形成され、先に計算した実効再生産数を一気に落とすことができるのです。

あるいはワクチン以外にも、感染者をすぐに特定し、感染者との接触を完全に防ぐようなイノベーションが助けてくれるかもしれません。人が動かなくなり、接触がなくなると考えるのは非現実的なことですが、感染者と非感染者の接触がなくなれば、免疫がなくても、そもそもウイルス感染の伝播は起こらなくなるのです。

あるいは、今流行しているウイルスと全く同じ顔の無害なウイルスを人に感染させ、物凄い速度で伝播させるというような、はっと驚くイノベーションが誕生する日もあるかもしれません。

このように、ワクチン、科学の世界のイノベーションが、これまでの感染流行を収束することに成功してきましたし、このコロナウイルスに対しても感染の波を小さく、短くすることに一役買ってくれるはずです。

そして何より、過去のあらゆるパンデミックでの経験が、「終わりのないパンデミックはない」ことを教えてくれます。
厳しい毎日が続きますが、出口のないトンネルはない。そんな希望を持ちながら、今できることを考えていきましょう。

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