日本古来の「寄せ鍋」はうま味の宝庫


肉、魚、野菜、きのこなど、いろいろな具材を寄せ集めて仕立てるのが寄せ鍋。人気の理由は、たんぱく質も野菜も一度にとれる栄養バランスの良さもさることながら、スープを一口飲んだだけで胃袋がつかまれるうま味です。

寄せ鍋は、核酸系うま味成分である動物性食品(イノシン酸)やきのこ類(グアニル酸)と、アミノ酸系うま味成分である野菜類(グルタミン酸)のうま味が一つの鍋の中で同時に溶け合ってうま味の相乗効果が生まれます。

調理法は簡単。鍋に昆布と水を入れ、30分以上おいて水だしをとり、あとは鍋の常連、白菜、豆腐、ねぎ、しいたけなどを全部いっしょに入れるだけ。火にかけて40〜70℃の温度帯を通過するとき、具材のうま味が最も引き出されて3倍にも増えます。これはゆるやかに加熱してこそなので、その仕事は土鍋が大得意なのです。

 


和食のだし同様、洋食の味のベースはブイヨン


和食のだし汁に対して洋食にはブイヨン、中国料理には湯(タン)があり、共通しているのはアミノ酸系うま味成分を含む植物性食品と核酸系うま味成分を含む動物性食品の組み合わせによるうま味の相乗効果がベースとなっていること。

 

中でも洋食のブイヨンは核酸系うま味成分(イノシン酸)を含む牛肉と、アミノ酸系うま味成分(グルタミン酸)を含む玉ねぎ、にんじん、セロリなどの香味野菜を煮出したもの(ベジブロス)で、日本のだしに比べて各種アミノ酸を含んだ複雑なうま味を構成しています。スープや煮込み料理のベースに使うと、自然にうま味の相乗効果が働きます。
この原理はたとえばフランス料理のポトフ(牛肉+野菜)、スペイン料理のパエリア(魚介類+野菜)、イタリア料理のミートソース(牛肉+トマト)など各国の料理にも生かされています。