コロナ危機によって、原油価格がマイナスになるという前代未聞の出来事がありました。これは商品市場という特殊な世界の話であり、私たちの生活に直接、関係しているわけではありません。しかし、この出来事から私たちが学べることは多そうです。
今回の感染拡大が一段落した後、私たちの生活が大きく変わると感じている人は多いと思います。そしてその変化というのは、大量にモノを消費したり、人が世界中を移動するのではなく、もっとコンパクトな社会を目指す方向性となる可能性が高いでしょう。原油価格がマイナスになったという出来事は、実は、私たちが持つべき新しい価値観を暗示しているのかもしれません。
4月20日のニューヨーク原油先物市場では、5月物の価格が異常な水準まで下落し、一時、1バレル当たりマイナス37.6ドルという前代未聞の値段を付けました。価格がマイナスというのは、一瞬、どういうことなのか判断が付かなくなりますが、冷静に考えれば、価格がマイナスというのは十分にあり得る話だと理解できると思います。
もしあなたがクルマを持っていて、ほとんど使わなくなったことから、そのクルマを売ろうと考えたとします。クルマを持っていると自動車税などの税金がかかりますし、都市部では駐車場代も必要となりますから、持っているだけでコストがかかります。
ここで、あなたの持っている車があまりにも時代遅れだったり、色がヘンだったと仮定しましょう。本当ならば50万円くらいで売れるはずのクルマですが、中古車屋さんに行っても買い手がいないといって買い取りを断られてしまいました。
しかし、使わなくなったクルマを持っていても、毎月、余計なお金が出て行って赤字が増えるばかりです。業を煮やしたあなたは、SNS上で「10万円あげるから私のクルマを持っていって!」と叫んだとします。これはクルマをもらう側からすれば、タダでクルマが手に入ったうえ、10万円までもらえてしまいます。一方、クルマを売ったあなたには1円も入らず、逆に10万円の出費が加わります。
価格がマイナスというのはまさにこのような状態のことを指しています。
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