緊急事態宣言下の都内のガソリンスタンド。外出自粛による需要減もあり、この1ヶ月の国内ガソリン小売価格は下がる一方だという。 写真:アフロ

この取引は5月末に引き渡しを行う原油ですが、コロナショックで経済が止まっていることから、5月に石油を欲しがる事業者がいませんでした。原油の所有者は保管コストがあまりにも高いので、お金を払うから持っていって欲しいということで、価格がマイナスになったのです。

 

あくまで一時的な値動きではありますが、この話は、コロナ後の新しい時代を暗示している可能性があります。

現在、コロナの影響はかなり深刻ですから、将来のことを考える余裕はありませんが、それでも多くの人たちが、コロナが終息した後には、社会や生活が大きく変わると感じ始めています。具体的に何がどう変わるのかは現時点では何とも言えませんが、少なくとも、社会がよりコンパクトになっていく可能性は高いでしょう。

原油の価格が、一時的とはいえ、前代未聞のマイナス圏まで売られたことの背景には同じような問題意識があると考えられます。コロナ後の社会は今ほど大量に石油を消費しない小さな経済になると多くの人が考えていたからこそ、ここまで価格が下落したのです。

もしコロナ後の社会が、大量の人やモノの移動を伴わない形になるのだとすると、私たちの生活もそれに合わせて変えていく必要がありそうです。私たちは欲しいものを次々に購入しては、ムダなものに囲まれて生活してきました。企業も安いモノを求めて全世界から商品を調達するのが当たり前でしたが、コロナショックはこうした企業活動にも大きな変化をもたらすでしょう。

これからの時代は、身近なものを大切にし、本当に必要なものにだけお金を投じていかなければ、自身の家計を維持するのも難しくなるかもしれません。

もし自分の身の回りに、大きな無駄があった場合、ある程度のコストをかけてでも、それを処分したり、誰かに引き取ってもらうことで、生活をシンプルにしていく必要があるでしょう。これは先ほどの原油価格とまったく同じことです。

市場というのはごく希に、一瞬だけ私たちに未来を見せてくれることがあるのですが、今回のマイナス価格というのは、まさにその瞬間だったのかもしれません。これが単なる誤解だったのかそうでないのかは、おそらく数年後にはハッキリしていることでしょう。
 

前回記事「自粛中のGW「家にいるから大掃除」は、ちょっと待った!」はこちら>>

 
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