抗原検査とPCR検査の違い

 

しかし、PCR検査と比べて良いところもあります。これはインフルエンザでもよく行われている検査手法ですが、早くて簡便であるという特徴があります。通常15分や30分ほどで結果を得ることができます。また、大きな装置を必要としないため、感染対策の防護具が十分あればという条件付きにはなりますが、どんな医療機関でも対応ができるようになります。

すなわち、この検査の広がりによって「必要な人に検査ができない」という歪みは大きく解消される可能性があります。

 


感染したばかりの人は、抗体検査で「陰性」となる


「抗体」の意義については、抗原検査のところで説明しましたが、この抗体の存在自体を評価するのが、抗体検査です。抗体は、ウイルスが体内に進入し、それに対する免疫の応答として出来上がるタンパク質で、通常、その産生までに2週間程度かかります。このため、2週間以上前の感染を確認するのに役立ちますが、今まさに感染した人で検査をしても、残念ながら陰性になってしまいます。

検査の正確性の問題も指摘されています。一度ウイルス感染した人でも、十分な量の抗体を作っていなければ、検査でひっかけることができません。この「抗体」というのは決して新型コロナウイルスにだけ存在するのではありません。人の体は様々な病原体や異物に対してこの抗体を作っているのです。このため、例えば(「新型」ではない)風邪のコロナウイルスのような、似て非なる病原体に対する抗体を検査で誤認してしまう可能性も指摘されています。

すなわち、これを診断学的に言い換えると、抗体検査陽性となれば、過去に新型コロナウイルス感染したと言えそうだが、実は過去の風邪の影響で陽性となった可能性も否定はできない。検査陰性と出れば、過去の感染はなさそうだが、今感染している可能性もあるし、過去に感染して十分抗体ができなかったなどの可能性もある、ということになります。

 

いずれも頼りないと感じるかもしれませんが、個人レベルの検査結果の判断というのは、それほど難しいのです。

ただし、実際の診断の材料は検査結果だけではありません。疑わしい症状があるか、感染者との濃厚接触はあるか、特徴的な血液検査結果が出ているか、X線やCT画像のパターンは新型コロナウイルスに典型的な陰を示しているか、などの情報を統合して診断は行われます。

これらの情報で、すでに新型コロナウイルスの疑いを強く持っていれば、検査だけでは100%正確といえなくても、陽性という検査結果を見て、自信を持って新型コロナウイルス感染だと言えるのです。逆にこれらの情報なく検査結果だけをもとに判断せよと言われても、困ってしまいます。だからこそ、無闇な検査は避けなくてはいけないのです。
 

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