3つの検査をどう使い分けていくのか

 

最後に、どうやってこの3つの検査を使い分けていくのか、その例をお示しします。

ここでは、あくまで個人レベルに落とし込むときの使い分けについて記したいと思います。国レベルの疫学調査では、また違った意味合いで用いられますので混同せぬようお願いします。

検査をうまく使うには、それぞれの限界を知り、得意分野を活かす必要があります。

今後、抗原検査の正確性がある程度確立されれば、まずは感染を疑った時点で、簡便で、ある程度どこでもできる抗原検査が広く行われるようになるのではないかと考えられます。

 

その後、この抗原検査で「陽性」と出てしまえば、感染を疑っている状況なら、この時点で診断として良いでしょう。あくまで抗原検査の正確性の第三者的な評価が先決ではありますが、このような状況下では、PCR検査が不要になると思います。

逆に、この抗原検査で陰性と出てしまった場合に、それでもなお感染を疑っているケースでは、PCR検査を追加で行います。こちらの方がより少ない量のウイルスまで検出できてしまうので、抗原検査で見逃した感染者を一定数拾い上げることが可能になるでしょう。

PCR検査でも陰性となったものの、それでもなお感染を疑っていて確証を取りたい場合は、一定期間を過ぎてから抗体検査を行い、振り返って感染を確認することに活用できるでしょう。

また、発症からそれなりの時間が経って検査するというケースでは、既にウイルス量が減っており、抗原検査もPCR検査も陰性になることが予想されます。こういったケースで診断を確定したい場合にも、抗体検査が役立つかもしれません。

抗体検査が、次の感染にかかりにくく安全に外出可能なことを示すパスポートのような役割をするのではないかという議論もあります。が、そこまで十分な正確性がないと考えられること、「陽性」といっても抗体の量には差があり、どの程度の量の抗体があれば感染を防げるのかは分からないこと、などから、まだその役割について十分なことを言える段階にはありません。

以上のように、PCR一辺倒であった状況から、少しずつ検査の武器も増えつつあります。これまでの感染流行では「PCRのキャパシティの限界」が叫ばれてきましたが、このようにうまく使い分け、すみ分けをすることで、PCRのキャパシティが急速に増えなくとも、あまり問題がない状況になるかもしれません。

例えば、抗原検査が感染者の6割程度を拾い上げてくれるのであれば、PCR検査は4割程度の方にしか必要がなくなるのです。

このように、検査体制も、順調に進歩を遂げています。新型コロナウイルスとうまく共存していける世の中になるように、検査技術もこれからますます向上し、我々を助けてくれるものと思います。
 

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