5月13日、新型コロナウイルス感染症を診断するための抗原検査キットを厚生労働省が承認しました。これまでの報道で目にしていた「PCR検査」や「抗体検査」と何が違うのでしょうか。検査方法が増えることに対して、私たちはどのように考えればよいのでしょうか。
医療の現場で、新型コロナウイルス感染症患者に向き合う医師、山田悠史さんに聞きました。

 


検査の目的と役割が違う


新型コロナウイルスを診断するための検査として、従来からPCR検査が行われてきました。報道でも毎日のように取り上げられてきましたので、これについては、もう皆様ご存知ではないかと思います。

これに加えて、今回新たに「抗原検査」というものが承認を受けました。PCR検査、抗体検査というのは聞いたことがあっても、抗原検査というのは馴染みがなかったかもしれません。そこで本稿では、この抗原検査も含めて、それぞれの検査の特徴や違いについて、まとめていきたいと思います。

まず、それぞれの役割を確認しておきましょう。

PCR検査と抗原検査はともに「いま感染があるか」を調べるための検査です。これらの検査で、「これまで感染があったか」を調べることはできません。

一方、抗体検査は「約2週間以上前に感染があったか」を調べるための検査で、いまの感染を見つけるのには不向きの検査です。

ここにまず大きなすみ分けがあります。なお、この「抗原」と「抗体」というのは似たような言葉ですが、大きく意味合いが違うのでご注意ください。

その違いを含め、ここから検査を一つずつ説明していきます。

 


PCR検査「陰性」。でも、感染しているかも


PCR検査では、ウイルスに特徴的な遺伝子の配列を見出し、ウイルスの遺伝子が存在することを証明します。

このPCR検査では、ほんのわずかなウイルスでも増幅して検出し、特徴的な遺伝子の配列の有無を調べ尽くすため、見逃しが少なく、間違って別のウイルスを新型コロナウイルスと判定してしまうような誤診もほとんどないことが知られています。すなわち、この検査の最大の長所は、正確性です。

もちろん、PCRの検査装置がどんなに優れていても、検査にパーフェクトはありません。患者さんに感染したウイルスが、検体を採取する鼻の奥の粘膜に顔を出していてくれ、それを医師がしっかりと採取できなければ、仮に感染していたとしても、遺伝子を拾ってくることはできませんから、いくら良い装置を持っていても、見逃しは生じる可能性があります。

実際に、10人の感染者がいたとして、最も正確と言われるPCR検査を持ってしても約3人は検査が陰性となり見逃してしまうことが知られています。

これらの事実を診断学で言い換えていくと、PCR検査で陽性を見たら、新型コロナウイルスの存在確率が非常に高いが、検査で陰性を見ても、新型コロナウイルス感染がないとは言い切れない、ということになります。
 

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