離婚は、熟年より「中年」に多かった!? 


たとえ自分ごとでない場合でも、「離婚」は現代社会においてより身近な存在になっています。経済学者である橘木俊詔さん、迫田さやかさんによる著書『離婚の経済学 愛と別れの論理』が教えてくれるのは、あくまで客観的視点で捉えた「離婚」の実態。

当事者視点による体験談ではなく、あらゆる統計・調査を考察し、時に歴史を紐解きながら、経済学というフィルターを通してリアルな離婚の実像を炙り出します。

働き盛りと重なる「離婚率が高い年齢層」、実際のところが気になる「高所得妻と離婚の関係」、厳しい現実が取り巻く「シングルマザーの台所事情」。親友とでさえ話すことをためらうような内容も、あらゆる角度から惜しみなく知識を与えてくれる“離婚学の手引き書”ともいうべきこの本から、特別に一部を抜粋してお届けします。

 

友人から「私、離婚したんだ」ということを打ち明けられることも珍しくない昨今。どれほど特別なことではなくなっているのでしょうか。

本書によると、1960年の離婚件数は6万9410件だったのが、2018年には20万8333件と約3倍になっており、思わず納得しました。

 

これだけ多くの離婚劇が生まれている中、年代のボリュームゾーンについても気になるところ。統計からわかるのは、男女共に“働き盛り”の30代における離婚率の高さです。

「戦前から現代までにわたっての年齢別の離婚率の推移から現代に注目すると、若年(29歳まで)、中年(30〜49歳)、高年(50歳以上)と大きく区分した場合、中年層の離婚率がもっとも高く、ついで若年層、高年層と続く。ただしそれぞれの層のなかにおいても、例えば若年層では24歳以下よりも、24歳より年齢の上の人でかなり高い。中年層では30代が6〜8%と他の年齢層よりもかなり高い離婚率となっているし、高年層においては60歳を過ぎると離婚率は急激に減少する」

このように、本書の中で明かされた数値を見ると、一時、センセーショナルな問題としてさかんに取り上げられた「熟年離婚」が、実は統計上はインパクトが小さいというのは少し意外なところ。しかし、若い夫婦の離婚率が高い要因として別角度から垣間見えたのは、“連れ添った年月の長短”と離婚との関連性でした。

「25〜39歳の年齢層の離婚率が高い理由を別の視点からも確認できる。それは結婚期間別に離婚件数を示した数字でわかる。すなわち、結婚年数5年未満が約7万6000件で34.5%ともっとも多くなっており、ついで5年〜10年が22%と続いている。すなわち結婚年数10年未満が離婚件数のうち56.5%にも達しているので、日本の結婚は比較的短年間で終止符が打たれている。逆に熟年離婚数が少ないことを反映して、結婚年数が長くなるほど離婚をしないのである」

離婚率が最も高い25〜39歳の年齢層、かつ結婚年数10年未満の夫婦については、女性からの離婚申し立てがおよそ7割を占め、その数なんと男性の2.7倍! 妊娠、出産、キャリアアップと、女性のライフイベントが凝縮する年齢層だけに、夫婦間の問題も起こりやすいのかもしれません。