アメリカでは卒業式シーズンの5月。コロナ禍で卒業式に出席できない生徒たちのために、様々なセレブがオンライン卒業式にスピーチで飛び入り参加したり、ビデオメッセージを贈ったりして話題になっています。その中でも、私が今の状況下で必要な言葉が語られていると思ったのが、オバマ元米大統領が高校生たちに贈ったスピーチ。

写真:ロイター/アフロ

これから社会に出る卒業生だけでなく、大人である私たちにも今後の世界を生き抜くために大切な内容だと思うので、シェアさせていただきたいと思います。

 

ちなみに全文翻訳ではなく、ざっくりした要約なので、全部のスピーチを聴きたい方はこちらから動画をご覧になってみてくださいね。

Brut Japanが紹介した、オバマ元大統領の卒業スピーチ動画。翻訳テロップ付きです。

「このパンデミックは社会の様々な問題を浮き彫りにした。膨大な社会格差やなくならない人種差別、医療制度の不十分さ、などなど。今回のことで若い世代は、古い制度はもはや役立たずの代物だと気づいた。

どれだけお金を稼いでも、周りの社会制度が機能しなければそれは役には立たず、自分のことだけでなく、お互いを思いやる精神が不可欠だ。そして責任感があり適切な行動をとっていると思っていた大人たちが、実は全てのことに対する答えなど持っていないことも。

だから世界をよりよい場所にするための答えは、君たちの手に委ねられている。それに気づくのは怖いことかもしれないが、君たちを奮起するきっかけになることを望んでいる。この国が脅威にさらされている今、「理解するには若すぎる」とか「今までのやり方はこうだ」などとは誰にも言えないはずだ。これほど不確実でなんでも起こり得る時代に、君たちが新しい世界を作って行く。

私はもう古い世代だから、その力で何をすべきか指示したりはしないが、3つの簡単なアドバイスをしたい。

ひとつ。恐れないこと。この国は今までにも様々な危機を乗り越えて来た。奴隷制度や飢饉、疫病、南北戦争や世界恐慌、9.11などなど。それらを乗り越えてこられたのは、毎回、君たちのような若い世代が過去の過ちから学び、状況を改善する方法を見つけ出したからだ。

ふたつめ。自分がしていることは正しいことだと信じること。ただ気持ちいいことや便利で楽なことを考えるのは子供がやることだ。だけど大人の中にもそんな考えの人がたくさんいる。残念ながら、偉い役職や重要な職業に就いている人でも、まだそんな風に考えている。だから問題はこんなに深刻になってしまった。

君たちにはブレない価値観を持って欲しい。努力や正義感、誠実さや寛大さ、公正さ、他者に対するリスペクトなどがそうだ。間違えることだってあるだろう。誰でも間違いを犯すことはある。けれど自分の中にある真実が、どんなに不都合で厳しいものでも、自分を信じていれば、他の人々もついてくる。そして君たちは問題の一部ではなく、解決策の一部になることができる。

そして最後に、他者との繋がりを持つこと。大きなことはひとりでは成し遂げられない。今、人々は怯えているから、自分と家族のことだけを考えたり、自分と同じような見た目や考えや宗教の人たちのことだけを考えたりしがちだ。けれどこのような困難な時期を乗り越えて、誰もが均等な雇用機会を持ち大学に行けるような世界を構築したり、環境を守って爆発的な感染を防ぐためには、誰もが協力し合わなければならない。

だからお互いの痛みに敏感になって、お互いの権利のために立ち上がるんだ。私たちを分断する、古い価値観から卒業するのです。性差別や人種差別、社会的地位や貪欲さ。そして世界を、違う道へと導いて欲しい。

もし助けが必要なら、私とミシェル・オバマが設立したオバマ財団が君たちのような若い人々がコミュニティーを率いるためのスキルやサポートを提供する。全米と世界中の若いリーダーたちと君たちを繋ぐことを使命としている。

だけど本当は、私たちの言うことなんて聞く必要はないんだ。なぜなら君たちはすでに、様々なやり方で人々を導き始めているから。2020年卒業生の皆さん、おめでとう」


どうですか? さすがは「Yes, We Can!(私たちにはできる)」の名スピーチで支持されたオバマ氏。スピーチが上手すぎる。

彼が語ったアフターコロナ時代を生き抜くための心構えは、コロナ禍で浮き彫りにされた様々な社会問題や一部の不祥事の、根本的原因の核心を突いたものでもあるような気がします。

今回のことで私がいちばん強く感じていたのが、「社会的分断と対立」という問題。ストレスを感じた人々が、自分と異なる立場や考えの人々を叩いて排除しようとしたり、自分たちの権利に必死にしがみついて他者を引き摺り下ろそうとしたりする様子をネットやニュースで目の当たりにするたびに、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を思い出してしまいます。

環境や他者との真の意味での共存を考える。それが今後の世界で生きるために必要なこと。すでに責任ある大人である私たちが、次の世代のために今できることって、何なのでしょうね。
 

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