まずはウイルスの真実を知ること


ここまで、いたずらに不安におびえるのではなく、いかに問題の本質を理解して、課題に立ち向かうかが重要だとお伝えしてきました。ここからは、私たちひとりひとりが、どのように立ち向かっていけばいいのかについてお話しします。

先の見えない不安定な状況で、私たちの力になるのは正しい知識とファクトベースの思考です。正しい情報を知っていれば、いたずらに不安に陥らなくて済みます。何が対応すべき問題で、どこがおさえなければならないポイントなのか。

新型コロナウイルスは未知のウイルスですが、全てが解明されていないわけではありません。例えば、人体への感染経路です。飛沫や手による接触で口や目鼻の粘膜などから入る以外に、人体に入る経路はありません。だから、マスクや手洗い、消毒が重要なのです。まず、敵を知ること。相手を知れば、見えない怖さに怯える必要もなくなるのです。

新型コロナウイルスを「怖い」と感じている皆さんには、まず、この本をおすすめします。ブックレットという形のコンパクトで薄い本でありながら、必要十分な情報が網羅されている最新本です。
知識は、力になりますよ。

どうする!? 新型コロナ』岡田晴恵著 岩波書店新型コロナウイルス感染症COVID-19とは、どんな病気か?予防方法は?治療と看護は?感染免疫学、ワクチン学を専門とする著者により、簡潔にまとめられた一冊。
 


考えることを考える


また、正しい情報に基づくファクトベースの思考ができていれば、不安に煽られることも、問題の本質を見誤ることも少なくなります。

何かが起きた際に、その事象の負の面だけに焦点を当て、マイナスの情報だけを集め、それに基づいて判断しても、正しい判断にはなりませんよね。物事には全てダークサイドがあります。よい面もあれば、悪い面もあるのです。

例えば今、パンデミックを機にグローバリゼーションを見直すべきだという声も耳にしますが、それはパンデミックという問題の本質ではありません。パンデミックはグローバリゼーションのダークサイドにすぎません。

ダークサイドだけに目を向けることがいかにナンセンスか、自動車で考えてみるとわかりやすいでしょう。自動車は、1年間に135万人の命を世界中で奪っています。ですが、自動車は事故を起こして135万人の人命を奪うから、自動車を使うことはやめるべきだ、自動車産業はつぶすべきだ、などという主張は起こっていません。ダークサイドだけに焦点をあてて議論することが、どれほどおかしなことかは、この例ですぐにわかるでしょう。

さらにいえば、現在の状態を保てているのは、実はグローバリゼーションのおかげなのです。GDPの成長率は-10%、-20%などと予測されています。間違いなく、戦後最大の危機です。株価が1万円になっても少しもおかしくない。でも現実には2万円台を維持しています。おかげで企業も決算ができる。市民もパニックにならなくて済む。何故か。世界中の中央銀行が連携して、市中に大量の資金を供給しているからこそ、株価が維持されているのです。

症例などの情報連携や、マスクのゴム紐や布などの物資も、海外との連携によって日本に入ってきているものです。正しい情報を得て、ファクトベースで考えれば、グローバリゼーションのおかげで、コロナショックはこの程度に抑えられているということがわかります。

このように、全体の一部の面だけを切り取って考えるのではなく、悪い面だけではなく、よい面は何かと考えてみる。物事の両面から今後何が見えてきそうか、などを深く考え続けるクセをつけると、判断を間違うことなく、皆さんの人生を豊かにしていくことでしょう。

考えることに焦点を当てた本で、おすすめなのはこの本です。誰かに教えてもらえる正答がない状況下で、考えることを掘り下げた本です。「答えのない世界」は、まさにコロナショックの現在そのものですよね。本の前半は考えること、後半は著者の自伝的な語りで構成されています。破天荒な激動の人生を送ってきた著者だからこそ、深く考えて語ることができる。『答えのない世界を生きる』は、決まった正答がないコロナショックの中を生きていく、道しるべとなってくれるでしょう。

答えのない世界を生きる』小坂井敏晶著 祥伝社
混沌さを増す社会で、ついこれまでの常識に頼り、答えを探したくなるもの。でも、答えがないとしたら、どうするのか...。自分の頭で考えるとはどういうことか、考えさせられます。