“人との距離”が、今のこの世界を物語る
山本佳代子「ベランダシューティングツアー」

写真:山本佳代子

大好きな人たちに会いたい。長い自粛生活の中で誰もが抱える気持ちをソーシャルディスタンスを維持しつつ形にしたのが、フォトグラファー・山本佳代子氏による「ベランダシューティングツアー」なるプロジェクト。友人たちに電話をして家のベランダや窓際まで出てきてもらい、立ち位置などを指示しながら路上から望遠で撮影。そうして収められた顔は久しぶりに会えた喜びと束の間の開放感に溢れていて、みんなとても楽しそう。でも同時に、被写体との距離から今の状況の歯痒さが伝わってきたりもして、見ているこちらまで胸がギュッとなってしまうのです。

写真:山本佳代子

コロナなんて早く収束してほしいし、みんなにも早く会いたい。でも会いたい気持ちを再確認できたのは決して悪いことじゃない。そんなポジティブな気持ちにさせてくれる「ベランダシューティングツアー」は山本氏のホームページインスタグラムから見ることができます。

 

さらにこのプロジェクト、BEAMSのキャンペーンに起用されたことで全3本のムービーに発展。29日現在、第二弾まで公開されています。

BEAMS「Dear friends. 〜 わたしの世界 篇」

ムービーでは女優の安藤サクラがナレーションを担当、書き下ろし曲「魔法」をシンガー・ソングライターの阿部芙蓉美が提供するなどスペシャルな仕様に。また特設サイトには、山本氏がこの企画のために撮り下ろしたカットも多数掲載されているので、こちらもぜひチェック。


苦境のエンタメ界に差すひとすじの光
晴れ豆演芸 vol.03 柳家喬太郎 独演会

 

コロナ禍の苦境続くエンタメ界で、この状況にいち早く順応してみせたのは意外にも「落語」でした。若手ベテラン問わずさまざまな形で配信を始めているのは、噺家一人で舞台が成立し、設備も最小限で済むことが大きな利点となっているようです。

今最も人気のある噺家のひとり柳家喬太郎は、5月に東京・代官山のライブハウス「晴れたら空に豆まいて」の主催でオンライン独演会を開催。生の高座の魅力には及ばないものの、遠方に住む人も気軽に楽しめ、また喬太郎ほどの人気噺家でもチケット争奪戦のストレスがないといった配信ならではのメリットもあり大盛況の様子。営業再開の道がとくに厳しいといわれるライブハウスにとっても、寄席に行けずウズウズしている落語ファンにとってもまさに光明か、早くも2回目の開催がアナウンスされています。

ここで重要なのは、それら配信の多くが「有料」であることです。緊急事態宣言が出された直後は数々のアーティストが音源や動画を無償提供し、それらは外出自粛中の私たちにとって大きな心の糧となりました。しかし経済活動が再開しても従来のようなイベント開催はほぼ不可能と言われるなかでは、アーティストは場所の要らない魅力的な有料コンテンツを生み出し、私たちはそれに対してきちんを対価を払うことが、表現の場を守っていく上での必須条件となるでしょう。少人数・小規模という強みを生かした噺家たちの活躍に、そのヒントが隠されているかもしれません。

生配信『晴れ豆演芸 vol.03 柳家喬太郎 独演会』
●6月18日(木)OPEN19:45 / START20:00
出演:柳家喬太郎
録画配信は6月19日(金)〜23:59 まで
(録画配信にも視聴チケットが必要です)

詳細・チケット申し込みはこちらから>>

文/山崎 恵
 

 

前回記事「関西ジャニーズJr.から東野幸治まで「サクっと楽しめるお笑い配信コンテンツ3選」」はこちら>>

著者一覧
 

映画ライター 細谷 美香
1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。

文筆家 長谷川 町蔵
1968年生まれ。東京都町田市出身。アメリカの映画や音楽の紹介、小説執筆まで色々やっているライター。著書に『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』(洋泉社)、『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、共著に『ヤング・アダルトU.S.A.』(DU BOOKS)、『文化系のためのヒップホップ入門12』(アルテスパブリッシング)など。

ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。人生で最も強く影響を受けた作品は、テレビドラマ『未成年』。

メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

ライター 須永 貴子
群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。編集プロダクションを経てライターとなり、エンタメジャンルをメインに、インタビューや作品レビューを執筆。『キネマ旬報』の星取りレビューに参加中。「食」と「旅」と「犬」が好き。

ライター 西澤 千央
1976年生まれ。文春オンライン、Quick Japan、日刊サイゾーなどで執筆。ベイスターズとビールとねこがすき。

ライター・編集者 小泉なつみ
1983年生まれ、東京都出身。TV番組制作会社、映画系出版社を経てフリーランス。好きな言葉は「タイムセール」「生(ビール)」。

ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『連続テレビ小説 なつぞら上』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。

ライター 渥美 志保
TVドラマ脚本家を経てライターへ。女性誌、男性誌、週刊誌、カルチャー誌など一般誌、企業広報誌などで、映画を中心にカルチャー全般のインタビュー、ライティングを手がける。yahoo! オーサー、コスモポリタン日本版、withオンラインなど、ネット媒体の連載多数。食べること読むこと観ること、歴史と社会学、いろんなところで頑張る女性たちとイケメンの筋肉が好き。寄稿中の連載は、
「yahoo!ニュース」『アツミシホのイケメンシネマ』
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「COSMOPOLITAN」日本版『悪姫が世界を手に入れる』
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