和食には主菜と副菜以外に、ごはんとみそ汁があります。それぞれを盛り付けるだけで手間がかかりますし、食器もかなりの数。私は3人兄弟、祖父母もいっしょだったので、計7人で食事をしていました。盛り付けだけでも時間がかかり、母は座る暇もなかったなと思います。

今、わが家の料理は、鍋やフライパンごと、もしくは大皿に盛って、食卓にどーんと出すというスタイル。フランスの家庭では基本、こんな感じです。おのおのに1皿ずつ取り皿を出せばOK。スープがない日は、前菜もメインも付け合わせも、皿1枚でいただけます。みんながテーブルに付き、それぞれが食べたい量を取り分けて食べるので、キッチンで盛り付ける必要がなく、配膳用のスペースも不要に。使う食器が少ないので、皿洗いも本当にラク。そのうえ、盛り分けて運んでいるうちに冷めてしまうということも防げて、いいことばかりです。

タサン家の食卓では、煮込みは鍋ごとテーブルへ。食卓にそのまま出しても違和感がないように、黒のシックなタイプのお鍋を選んでいるそうです。

この取り分け方式のさらなるメリットは、食べる人も料理に参加できること。食が受け身でなくなるのです。フランスでは、取った料理は責任を持って食べきることがマナー。自分で皿に取ったのに残すときつく叱られます。だから、その日のお腹の空き具合や体調に合わせて、大人も子どもも自分が食べられる量を考えて、取り分けます。親が量を決めるとどうしても受け身になってしまいますが、自分で決めれば、幼いなりに、自分の選択に責任を感じるよう。自然に自分の体調も意識するようになり、自己管理、体調管理にもつながります。

 

自分のことは自分で決めるという、訓練にもなると思います。毎日のことだから、日々の積み重ねでできるようになるもの。なにより息子を見ていると、自分で決めるということがうれしそう。子ども扱いされていないことを感じるのかもしれません。まだ2歳なので本人に確認しながら、親が取り分けることが多いものの、自分で取り分けるときもあるほどです。

ママがいっぱいいっぱいになって笑顔がなくなってしまうより、楽しく笑顔で食事をすることがいちばんの食育な気がします、と志麻さん。

もちろん、料理を鍋ごとテーブルに出すなんていやという人もいらっしゃいます。素敵な器がたくさん並ぶ食卓が好きな人もいるでしょう。でも、こんなラクな方法があることも知っておき、気持ちが焦っているとき、忙しいときに試してみるのもいいかもしれません。「今日は、フランス式で!」と考えれば、後ろめたさも払拭できます。食事の準備が苦でなくなり、気持ちもラクに。それが楽しい食卓につながるのなら、そんな方法もありです。
 

 

『ちょっとフレンチなおうち仕事』

著者:タサン志麻 ワニブックス 1540円

伝説の家政婦・タサン志麻さんの築60年の古民家生活には、心地よい暮らしのヒントがいっぱい。どんな家庭の台所でも「おいしい」を生み出せる秘密から、フランス式の子育てまで、日々の生活をちょっとラクするためのコツが詰まった一冊です。


構成/金澤英恵

 

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