コロナ危機による影響で大手アパレルのレナウンが経営破綻したことも同じ文脈で理解することができます。

関係者にとっては非常につらい状況だと思いますが、同社については以前から経営を不安視する声が出ていました。その理由は、財務体質が脆弱といった事情もありますが、もっとも大きいのは百貨店に過度に依存した販売チャネルです。

 

従来型アパレル企業の多くは、百貨店を主な販売チャネルとして成長してきました。今回、コロナによって百貨店が休業したことから、売上げが一気になくなってしまい、これが倒産の引き金となったわけです。
しかしコロナによる百貨店の休業は単なるきっかけに過ぎません。百貨店という業態そのものが時代に合わなくなっており、そこに依存するアパレル企業は今後、存続できなくなるというのはアパレル業界では常識であり、レナウンのような企業は抜本的な戦略転換が必要と指摘されていたのです。
同社にとっては不運な出来事でしたが、コロナによって変化のスピードが一気に加速しただけであり、状況が突然、変化したわけではありません。

 

一連の出来事を整理すると、コロナ危機は私たちに対して、「避けられない変化については、それを受け入れること」を求めているように見えます。

作家の辻仁成氏はコロナによる社会の変化について「火星に向かう宇宙船」に例えています。

人間というのは進化する生き物であり、火星に向かうということは、人類の進化が続き、それに伴って価値観も変化していることを意味しています。コロナによってジョギングのやり方も買い物の手段も変わってしまいましたが、辻氏は息子の十斗くんと話し合い、ジョギングは「宇宙遊泳」、買い物は「船外活動」いうことにしたそうです。宇宙遊泳や船外活動は、最初は負荷が大きいかもしれませんが、いずれ、当たり前の行為として定着することでしょう。

人はどうしても自分が慣れ親しんできた行動に束縛されてしまい、必要な変化であったとしても感情的に拒絶してしまいます。しかし、いつの時代においても社会は変化するものであり、人はその変化に対応していかなければなりません。
 
コロナによって世の中が変わってしまったと嘆くのではなく、求められていた変化を受け入れるべきだという、ある種の啓示と捉え直した方が、物事を前向きに進めていけるのではないでしょうか。

前回記事「黒川前検事長が新聞記者と賭け麻雀していた本当の理由」はこちら>>

 
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