――先が読めないからこそ、最初から分散させておくことが大切なんですね。これから経済的には先行き不透明な世の中になりそうですが、家計で気を付けた方がいいことはありますか。

柴山:個人個人が、お金に賢くなっておきたいですよね。

長い目で考えて、積み立て&分散で資産運用をしていただきたいと思いますが、そもそも積み立てるためのお金がないと運用できません。でも、よくよく家計を見てみれば、きっと“惰性”で使ってしまっているお金があるはず。

もちろん、自分や家族にとって大切なものや、仕事をするうえで大切なものには、もし他の人からは「ムダかも?」と思われたとしても、お金を使うべきだと思います。

でも、自分自身でも「なんとなく」で使っていたり周りに合わせたりして使っているお金もあるかもしれません。


――必ずありそうです(笑)。今回外出自粛で人と会うことが減り、「周りとあわせること」が減って、自分に本当に必要なものやお金の使い方を考えるいい機会だったかもしれません。

柴山:「自分にとって本当に必要なことは何か」を見直す機会となりそうですよね。

お金だけでなく、仕事もそうです。例えば、一部で「印鑑って必要?」と、話題になっていますよね? 印鑑を押すために出社しなくてはならないという例もあるようで、変えていこうという声が上がっています。

これはほんの一例ですが、改革はどんどん進んでいくでしょう。在宅勤務のスタイルも進化するでしょうし、これまで先送りされてきた問題をスピード感を持って解決していくチャンスでもあります。

――多くの人が在宅勤務をして、女性だけでなく、男性も「家事や育児をしながら仕事」に直面しているように思います。柴山さんはいかがですか?

コロナ禍で変わるお金の使い方と向き合い方【ウェルスナビ・柴山和久さん】#コロナとどう暮らす_img0
取材もオンラインで行いました

柴山:私自身も在宅勤務が増えました。

家事でいうとコロナの前から担当だった食器洗いが、ほぼ私の担当になりました(笑)。食洗機もありますが、魚を焼いた後のグリルなど早く洗わないといけませんから。朝の最初にビデオ会議が始まる前に洗っておくようにしています。

また、私自身は自宅に自分の部屋がないので、リビングで仕事をしていますから、毎朝、リビングの床を掃除するのも、自然と私の担当になっています。

また、家族でUNOやババ抜きなどカードゲームをしたり、本を読み聞かせるなど、6歳の娘と遊ぶ時間が1日1時間はとれるようになりました。

 


――ほかには何か変化がありましたか?

柴山:ジムに行けなくなったので、代わりに社員から送ってもらったエクササイズ動画で運動をしたら、なかなかハードでした(笑)。

仕事面の変化としては、会議の数が減りましたね。オンライン会議で集中できるのは30分が限界だと感じて、長い会議を減らしました。そうすると社員と雑談ができないので、1on1(1対1)のミーティングをこまめに設けています。以前よりも生産性が上がったような気がしますね。

――投資については、金額や内容など、何か変えたことはありますか?株価が下がった時に買い増したなどありますか?

柴山:投資については、私自身も将来に備えて長期で運用していますので、まったく変えていません。

それに、マーケットの変化にあわせるのではなく、「自分の都合」で変えた方がいいですね。マーケットではなくご自身やご家族の状況が変わったという場合は、投資のスタイルを見直していただくのもいいと思います。

たとえば、家計を見直してお金に余裕がありそうなら、「増えた分の半分は、老後のために積み立てよう」などというのもいいでしょう。逆に「収入が減りそうだ」ということなら、積立額を減らすのもありだと思います。無理に積立額をキープすることで、いまの生活が厳しくなってしまっては本末転倒ですから。

――今後世の中が変わっていくなかで、柴山さんはお金の価値観は変わると思いますか?

今回のコロナ禍で、私たち一人ひとりが経済面で受ける影響はまったく違うため、一概にいうことは難しいです。例えば、年金生活の方であれば、年金自体は変わらず、給付金10万円を受け取り、収入はむしろ増えているかもしれません。それとは正反対に、自粛によって、収入が減ったり、仕事自体がなくなりそうで不安を抱えている方も大勢いらっしゃいます。

このように一人ひとりの置かれている状況が異なるため、お互いの状況を思いやり、助け合うことが大切です。助け合うためのツールとしてのお金の役割は、今後、ますます大切になるでしょう。私自身は週末に家族でよく行っていたお店からは、なるべくテイクアウトをするようにしています。

「日本には寄付文化がない」と言われますが、結婚式のときの祝儀や、お葬式の時の香典のように、物入りのときには、みんなでお金を渡して助け合う習慣がありますよね。今回のコロナ禍を経て、日本にもお金で助け合う文化が広がっていけばと思います。

お金で好きなモノを買ったり、思い出に残る体験をする。いざという時や、豊かな老後のために備える。それに加えて、周りの人たちを助けるためにお金を使う。そんなバランスが取れていけばと願っています。

コロナ禍で変わるお金の使い方と向き合い方【ウェルスナビ・柴山和久さん】#コロナとどう暮らす_img1
 

――一方で、「働き方や仕事」に対してはどう考えていらっしゃるでしょうか。

柴山:資産運用と同様に、長期で考えたいですね。10年後、20年後も働くとしたら、「今も大切で、10年後も大切なもの」を中心に、仕事を考えていくべきだと思うんです。

日常業務の中でも、「なんでいまだにこんなんことをやっているんだろう」ということがあるはず。それは10年後には残ってはいないでしょう。今回のコロナショックで普及し始めた在宅勤務は、今後10年、20年でさらに増えていくと思います。

子育てをしながら仕事をするのが大変だという問題は、日本だけでなくアメリカやヨーロッパなども同じ、世界的な問題です。みんなで知恵を出しあって、今後解決していく方向へ向かうのではないでしょうか。

読者の皆さんも、「ここはおかしいから、変えた方がいいんじゃないか」と感じていることがきっとあるはず。一人ひとりの中に、変えていくべきものは何か、すでに答えを持っているのではないでしょうか?

そうやって一人ひとりが変えていくことで、仕事の生産性が上がり、それが積み重なることで、世の中が動いて、世界経済は必ず成長していくと考えているんです。

撮影/山本遼
取材・文/西山美紀
構成/片岡千晶(編集部)

 

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