飛行機とクルーズ船はまったく違う

 

一般に、飛行機は他の乗り物に比べて感染が広がりにくいとも考えられています。皆が同じ方向を向いていて飛沫を直接浴びにくいこと、他の乗り物に比べればおしゃべりをしている時間が短いことなどが理由に挙げられます。

 

例えば、比較としてクルーズ船を想像すると、食事の時間には皆でビュッフェスタイルのご飯を楽しむ姿が想像できます。が、飛行機では個人個人が黙々とモニターを見ながらご飯を食べますよね。それだけ飛沫が発生したり、飛沫に暴露したりする機会が少なそうなことが理解できます。

そして何より、飛行機には空気の循環システムが搭載されており、絶え間なく空気の循環があることが感染対策上重要であると考えられています。

実際、インフルエンザに関しては、機内の感染リスクをシミュレーションした報告が見られます。この研究では、インフルエンザ患者が搭乗した10便のフライトの観測結果から、1人の感染者から平均0.7人の乗客にしか感染が広がらないこと、感染の広がりは感染者と1m以内にいた人に限定されることを報告しています。

一方、同研究で、CAが感染していた場合には、4.6人の感染者が出ることも報告されており、感染者との接点の多さが命運を分ける可能性も示唆されています。
 

飛行機で、感染は広がりにくい?


また、空調の大切さを物語る報告として、空気の循環システムが故障した飛行機の5時間のフライトで、搭乗者54名のうち、38名の乗客にインフルエンザ感染が広がったことを示唆する報告もあります。感染対策に、換気が大事だ、と言われる所以ですね。

もう一つ大切な要素として、感染者が実際に乗り込んでいる確率も、その時の地域の感染者数からなんとなく見積もることができるかもしれません。例えば、人口約1000万人の東京で、1000人の感染者が街中に今いるとしたら、約1万人に1人が感染者ということになります。

飛行機の搭乗客が合計で500人ほどいたとしたら、感染者がそこに混じる確率は単純計算で5%ほどということになります。これを大きいと捉えるか小さいと捉えるかは個人の感覚にもよるかもしれませんが、そんなに高い値というわけではなさそうです。

このように「飛行機のリスク」と言っても状況によってまちまちとなりますが、空調がしっかり機能していれば、思われているほどはリスクが高くないのかもしれません。ただ、もちろん偶然隣に感染者が座ってしまえば、ソーシャル・ディスタンスは不可能な環境に数時間単位で晒されることとなり、ちょっとした会話などから感染リスクも生じるでしょう。このため、米国CDC(疾病予防管理センター)など多くの公的機関は不要不急のフライトを避けるよう勧告を出しています。
 

機内で身を守る方法


では、機内で身を守るためにどうするか。まずはこまめな手指消毒です。仮に感染者が搭乗していたとしたら、あなたが手を触れたトイレのドアノブにはウイルスが付着していたかもしれません。それを触ったら、あなたの手にもウイルスが付着している可能性がありますので、まず手指消毒をしましょう。特に手で顔に触る前、食事を摂る前はしっかりと手指消毒をすることが大切です。このような用途で、少量の消毒液を携帯しておくと良いでしょう。

また、空港の待合室や搭乗口など、ソーシャル・ディスタンスが十分取れない場所では、マスクを着用しましょう。逆に、もし十分なスペースがあるのであれば、マスクよりもソーシャル・ディスタンスを取る方が感染対策上は有効と考えられます。
 

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