――子どものうちから、お金の話をしておくことが大切ですね。

 

森永:「子どもにお金の話なんてみっともない」というご家庭もありますが、子どもは「お金の話をしてはいけない」と思い込み、話を聞く機会を逃してもったいないと思います。子どもは語彙力がないだけで、概念は意外とわかっているはずですから。

以前こんなことがあったんです。街で銀行を見かけて、子どもに「これなあに?」と聞かれたので、「銀行だよ。銀行にお金を預けたら、お金がほんのちょっとだけ増えるんだよ」と伝えました。

すると、家に帰って子ども2人がお店やさんごっこをして遊んでいるときに、売り上げの一部をよけるので「どうして?」と聞いたら、「銀行に預ければ、お金が増えるから」って。しっかり理解していますよね。

ところが、一部を貯めながら、お店の人とお客さんと役割を子どもが何度も交換していったら、結局資金がすべて銀行に預けられて、お店やさんごっこはできなくなってしまいました。

 

――そして、どうされたんですか?

森永:私が別のところからお金を持ってきて「これで続きをやったら」と伝え、またお店やさんごっこが始まりました。
実はこの現象、今、日本銀行がやっている“金融緩和”とまさに同じ。市場に資金供給をして、経済を刺激しているわけです。

貯金はいいことですが、全員が貯金をすると経済が停まってしまう。これは難しい言葉で言うと「合成の誤謬」といって、ミクロの視点では合理的な行動でも、マクロの視点では好ましくない結果が生じてしまうこと。大学の経済学部の2,3年生くらいが習う概念なんですよ。

子どものうちからなんとなく体験していれば、大人になって言葉を知ったときに、理解が早いと思います。

――親子でお金の話をしていくと、生きた金融教育になりますね。将来、詐欺にあうことも防げそう……。

森永:まあ、子どもが遊んでいるときにそういった話をして、「お父さん邪魔!」と言われることもありますけどね(苦笑)。
 

取材・文/西山美紀
構成/片岡千晶(編集部)

 

前回記事「コロナ禍で変わるお金の使い方と向き合い方【ウェルスナビ・柴山和久さん】」はこちら>>

 
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