コロナによって世の中が大きく変わって不安が高まる中、この荒波を乗り越えるために、お金とはどのように付き合っていったらよいのでしょうか。
今回お話を伺ったのは、経済アナリストの森永康平さん。「1人10万円の特別定額給付金や、その他さまざまな給付金が支給され始める今こそ、気をつけたいことがある」と注意を促します。

 

――1人10万円の特別定額給付金が支給され始めています。4人家族なら40万円になりますね。

 

森永康平さん(以下敬称略): そうですね。家族でまとまると大きなお金になりますので、「もらったら何に使おうかな」と思う方が多いかもしれません。でも、それよりも十分注意しておきたいことがあるんです。それは「減らさないこと」です。

というのも、新型コロナウイルスの問題が起きてから、さまざまな特殊詐欺が増えているからです。「あなたに給付金が届いていますが、振込口座がわからず振り込めませんでした。こちらの口座へ~」といった詐欺メールが届いている声も聞きます。

――うっかりひっかかりそう。危ないですね。

森永:はい、他にも「去年納めた所得税を戻すことになりました」といった詐欺メールも聞きます。「国や地方自治体から連絡がきた」と早合点して、まんまと詐欺にあってしまう危険性があるのです。

――私たちの親世代も要注意ですね。伝えておかないと。

森永:親世代を狙ったものだけではもちろんありません。外出自粛により在宅勤務が増え、Zoomなどを使ったオンライン会議が増えていますよね。こちらを逆手にとって、「本日のミーティングはこちらです」といった偽メールが送られてくるのです。「そういえば今日は会議があった」とクリックすると、詐欺のサイトに飛んで被害にあうといった仕組みです。

「自分はひっかからない」と思っている人こそ、注意不足になりうっかり罠にはまってしまうので注意ですね。

――そんな巧みな詐欺も横行しているのですね。オンライン会議はまだ不慣れな人も多いので、気を付けたいですね。他にも「お金を楽にふやせる」といった広告やサービスも増えたように感じます。

森永:お金についてみんな不安になっているので、「楽に増やせる」という言葉につられやすいですよね。切羽詰まっている方、せっかくだから10万円をもっと増やしたい、という方も多いでしょうから。

詐欺にあわないためには、まず「リスクとリターンの関係」を、しっかり頭に入れておきましょう。

――「リスクとリターン」と聞くと、なんだか難しそうと敬遠する方もいますが、どういうことでしょうか?

森永:ええ、僕自身の子どもたち(2歳、4歳、6歳)にも、わかるように話しているんですよ。

先日、車を運転しているときに、後部座席の子どもが飽きてしまって、「もっとスピード出してよ」と私に言ったんです。「うん、いいよ。でも、スピードを出しすぎると事故に遭うかもしれないし、おまわりさんにつかまってしまうかもしれないよ」と話をしたら、「それなら、ゆっくりでいいや」と答えました。

これはまさに、「リスクとリターンの関係」です。スピードというリスクを取れば、目的地に早く着くというプラスのリターンが上がる一方で、事故に遭ったり罰則があるというマイナスのリターンも上がります。

――「ローリスク・ハイリターン」といったおいしい話はない!ということですね。子どもでもよくわかりますね。

森永:そうなんです。投資の世界でもこれと同じです。グラフで考えると、左下にローリスク・ローリターン、右上にハイリスク・ハイリターンがあって、その右斜め上に向かって引かれた直線の上に、株や投資信託、債券などの金融商品が当てはまっていきます。

その線から外れるような「ローリスク・ハイリターン」という商品は存在しません。もしそんな商品があれば、詐欺だということがわかります。

「リスクとリターンは比例する」と子どものころから叩き込んでおけば、将来、子どもが大人になって友達や職場の人から「いい話があるんだよ」といわれても、「いやいやそれは違う」とだまされずに済むというわけです。
 

 
  • 1
  • 2