新型コロナの第二波が心配されますが、秋になれば、これに加えて、インフルエンザの流行が始まるかもしれません。もしも、コロナとインフルエンザの同時流行ということになれば、何が起きるのでしょうか。新型コロナのワクチン開発が待たれますが、今年、インフルエンザのワクチンは接種すべきなのでしょうか。総合診療医の山田悠史先生に、解説してもらいました。
新型コロナウイルスについての正しい知識をつけるために、過去の記事と合わせて参考にしてください。

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新型コロナとインフルエンザの症状は見分けがつかない


新型コロナウイルスが世界的な流行を見せる傍ら、忘れられてしまいそうなインフルエンザ。しかし、これからくる秋や冬のことを想像すると、インフルエンザのことも思い出しておく必要がありそうです。

現在の流行状況を見てみると、カナダやアメリカなど北米で数十人規模の感染者がいるのみで、新型コロナウイルスの感染者数と比較すると比べものにもなりませんが、北半球では、今秋から冬にかけて、再び感染流行が生じることが予想されています。

それに加えて、今秋は同時に新型コロナウイルス感染症の第二波が来る可能性もあります。感染症の流行が重なることで、二つの懸念が浮上します。

一つは、インフルエンザ感染とコロナウイルス感染がうまく見分けられないという点です。両者ともに高熱が出て、咳などの呼吸器症状をきたすという点で共通しているうえに、肺炎が続発する可能性があることも共通点です。

突然の嗅覚異常など、若干の相違はあるかもしれませんが、明確には区別できません。

そうなると、もし今秋にコロナウイルス感染が流行しなかったとしても、非常に困ったことが起きる可能性があります。

二つの感染症が症状で見分けがつかない以上、医療機関では、抗原検査やPCR検査で見分けをつけようとするでしょう。しかし、残念ながらコロナウイルスの検査もインフルエンザの検査も、ともに感度は良くて6割という限界があります。これは、10人の真の感染者がいたとして、6人は検査陽性でひっかけられますが、4人は検査陰性となり見逃すということを意味します。

すると、仮に検査が陰性だったとしても、本当はコロナウイルスかもしれないし、インフルエンザかもしれないということになります。そして、検査陰性の場合に両者の感染の可能性を考えて、治療や隔離などの対応をする必要が出てきます。
 

 

あやしい人を隔離することの限界がくる?


インフルエンザは毎年国内だけでも1000万人ほどの感染者を出します。インフルエンザウイルス、コロナウイルスはともに飛沫感染や接触感染を主体として感染が広がるため、コロナウイルスへの警戒が高まる中、もしかするとインフルエンザの流行は運良く例年より小規模になるかもしれません。

しかしなお、人の流れが起こる以上、インフルエンザが全く流行しないという状況は想像しにくいことです。

そこで、仮にとても楽観的な見方をしたとして、例年の10分の1の非常に小さな流行になったという状況を想定してみましょう。それでも感染者は100万人に上ります。

この全ての方にインフルエンザの検査を行なったとして、60万人は検査陽性となり、インフルエンザ感染症という診断に至ることになりますが、一方で40万人は検査陰性となり診断は分からないということになります。これらの方は重複感染がなければコロナウイルスの検査も陰性となりますが、結論として診断はなんだか分からないということになり、安全のためコロナウイルス感染症疑いとして取り扱われることになるでしょう。

すると、どうなるでしょう。陰性だった40万人もの規模の人が、真のコロナウイルス感染者に加えて、PCR検査を受け、隔離されることを想定しなくてはいけないでしょう。

これは、今春に日本で報告された新型コロナウイルス感染者数の20倍にも上るような規模の数字です。この規模の対象者の検査、隔離を考えると、仮に現在までと同レベルの感染流行しか起こらなかったとしても、社会、医療機関としての負担は非常に大きなものになることが予想されます。

皆さん、果たして、準備はできているでしょうか。
 

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