6月20日、空席が目立つ会場で演説するドナルド・トランプ米大統領。 写真:AP/アフロ

6月20日、アメリカのオクラホマ州タルサで行われたトランプ大統領の遊説集会で、19000人を収容する会場のチケットを、約7千人が購入して会場に現れなかったというニュース。これは主にK-PopのBTSのファンたちとTikTokユーザーの仕業によるものだった、ということをご存知でしょうか。

 

私は、このニュースをニューヨーク在住のジャーナリスト、黒部エリさんのSNS投稿によって知ったのですが、そのときにエリさんが「Z世代の選挙のやり方がすごい」とコメントされていたのを見て、ハッとしたのです。そうか、今世の中で起きているトレンドって、もしかしたらZ世代を軸に考えると説明がつくことが多いのかもしれない、と。

まず「Z世代とはなんぞや」というのを説明しますと、1990年代後半以降に生まれた人のことを指し、その前の「ミレニアル世代」と呼ばれるY世代よりさらにインターネットに慣れ親しんでいる生まれた時からのデジタルネイティブで、特にスマホのヘビーユーザー。

そして2001年に起きた9.11の同時多発テロを経験しているために社会問題への意識が高いと同時に、2008年のリーマンショックによる経済的影響も大きく、「努力重視の堅実派」で、「ブランドよりも本質を求め」「オンライン&オフラインでの仲間とのコミュニケーションを大事にする」というのが大きな特徴。2019年には全世界の人口の約3分の1を占めるようになったというから、その影響力は、経済的にも政治的にも、かなりのインパクトがあることがわかります。

少し話が逸れるのですが、私は最近視聴した、アメリカのZ世代に大ブームのドラマ『ユーフォリア』を観て、カルチャーショックを受けたばかり。

ドラマ「ユーフォリア/EUPHORIA」(全8話)より。BS10スターチャンネル【STAR2 字幕版】にて放送中。また、【スターチャンネルEX】にて配信中(毎週木曜、1話ずつ更新)。写真:Collection Christophel/アフロ

Z世代のリアルを描いたこのドラマ。ゼンデイヤ演じるヒロインは9.11の3日後に生まれ、幼い頃から不安障害を抱えているドラッグ依存症の高校生。学校ではネットいじめが横行していて、セックス動画はすぐに流出しちゃうし、マッチングアプリやパパ活は当たり前。

キラキラな世界観のSATCを視聴したあとにこのドラマを観たというのもあり、「Z世代って、こんなに先行きに夢が見られない暗い世代なの!?」とショックを受けてしまいました。

そんなワケで、『ユーフォリア』を観た直後に今回のトランプ大統領の集会の顛末を見たことで、私の中で「Z世代」の点と線が繋がった気がした、というのが、今回のテーマ(前置き長かった……!)。

ここ最近の世の中のトレンドを振り返ってみたときに、今までの価値観では信じられないようなことがたくさん起きているわけですが、それを「Z世代の台頭」を軸に考えてみると、すべてが起こるべくして起きている改革なのだなあ、と。


例えばですが、「ダイバーシティの波に乗れなかったヴィクシー王国の崩壊」
ファッションモデルよりもリアルなインフルエンサーをおしゃれアイコンとするZ世代たちが、バービー人形のようなヴィクシーモデルを広告塔にした「ヴィクトリア・シークレット」というブランドには見向きもしなくなったのは当然の結果といえるでしょう。その背景には、リアーナの『サヴェージxフェンティ』をはじめとする、彼らの嗜好をいち早くマーケティングに取り入れて、プラスサイズや妊婦、トランスジェンダーのモデルを起用して「どんな体型だってセクシーになれる」というコンセプトを打ち出したランジェリーブランドの下克上があります。

そして去年、暗〜いアンチ・ヒーロー映画の『ジョーカー』が世界的にヒットして2019年を代表する作品となったことも、将来に頭打ち感を抱えるZ世代たちがSNS上でレビューをシェアしまくったことを考えれば、合点が行くではありませんか。言われてみれば私が映画館で鑑賞したときも、20代の観客が多かったのが印象的でした。

また、「勢いが止まらない#me too運動の盛り上がり」や、「画一的な美の基準を鵜呑みにせず、どんな体型も美しいと受け入れるボディ・ポジティブのムーブメント」、などなど。

多種多様な環境に生まれ育ったZ世代は人権にも多様性にも敏感。そしてSNSのスマートな使い方を心得ていて、仲間との繋がりを大事にする。

という観点から今回のトランプ大統領の一件を見てみると。今アメリカで起きている、黒人差別問題に抗議する「# Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)」運動に約1億円を寄付したBTSのファンたちが、その反勢力と見られるトランプ大統領の遊説集会のチケットを大量に買い占めた上で故意にボイコットしようとTikTokなどのSNSで拡散し、「オタク仲間」たちと結束したというのは、なんともZ世代「らしい」やり方と言える、ということなのですね。

私たちX世代(1960年から1974年生まれをこう呼ぶそうです)には思いもつかないアイデアや価値観で動くZ世代。自分たちの社会を、きちんとした意思を持って自分たちで変えて行こうとする姿勢には、反省させられたり学ぶところもいっぱい。

奇しくも日本では都知事選真っ只中。私たちの住む社会を変えていくために、大事な一票を、誰に投票しましょうかね。

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