一方、さとみの話です。

前号で、石井杏奈さん演じる令和版のさとみは、物語の中盤から自立する道を選び始めると書きました。(「クララが立った事件→前号参照」)
でも、有森也実さん演じる平成版のクララさとみは、最後まで立たないんだ、これが。

平成版さとみと令和版さとみ。ここが違う


三上くんの浮気が判明したときには……

(平成版さとみ)「三上くんと別れるかどうかは、永尾くんが決めて」
(令和版さとみ)「私のこと、バカにしないで。あなたとは、別れる!」

って感じで、自分のことなのにカンチまかせなのが、平成のさとみ。

さらに平成版と令和版の違いが如実に現れるのが、ドラマのクライマックス。リカの元に駆けつけようとするカンチを引き止めるシーン。

(平成版さとみ)「リカさんのところに行かないで……。あ、ごめんなさい、私、何言ってるんだろう……」→カンチに抱きしめられる
(令和版さとみ)「リカさんのところに行かないで! 絶対に嫌!」→カンチに突き飛ばされる
って違いなんですよね。

ちなみにカンチを引き止めるシーンが流れた放送当時は、有森也実さんに脅迫状が届くほど、「さとみ憎し!」の投書が絶えなかったのだとか。

↑90年代を象徴する立ち上がり前髪+ゆるウェーブ。しめ縄ばりに太い三つ編みが、いい感じの田舎感を醸し出す。三つ編みや編み込みが定番で、「明星」の女優ヘア特集を見て、みんなヘアアレンジにいそしんでいた。



さとみに関しても、平成版は最後まで他者依存の強い女性として描かれているけれど、令和版は、自立した女に生まれ変わろうとする話だったなと思う。

そして最後に、三上くんも。
江口洋介さんが演じた平成版の三上くんが、単に女好きのプレイボーイなのに対して、清原翔さん演じる令和版の三上くんは、「父親から自立できない自分」をこじらせ、その鬱屈とした気持ちの吐け口を女の子に求める役柄。
父親が死んだことで、つきものが落ちたように一人の女性を愛せるようになる過程も、まさに自立への道だな、と感じるのです。

全体を通して、令和版「東京ラブストーリー」に出てくる男性陣は、平成版に比べて幼いなと思いました。カンチも三上君も。そして、リカと不倫する和賀部長も。
男が「大人の男」になるためにかかる時間は、昔よりも長くなっているのかもしれないですね。

 

というわけで、平成版をリアルタイムで見た私が、令和版をそれほど違和感なく楽しめたのは、すみずみ細かく改変された脚本のおかげだったのかも。
みなさんもぜひ、見比べてみてくださいませー。

次週は、現在進行形のドラマ、いきますね。

それではまた、来週土曜日に。

イラスト/白ふくろう舎

【画像】「東ラブ」ヒロインの髪型&メイクを徹底分析!>>

前回記事「女はだいたいハイジかクララ。『東京ラブストーリー2020』もやっぱり勝つのはクララ?」はこちら>>

 
  • 1
  • 2