医療設備が整っている国なら旅行しても安心?


高橋:感染者数以外に、渡航先を決める基準はありますか?たとえば、医療設備が整っている国の方がいいなど、目安になるものがあれば知りたいです。

山田先生:いざ、感染したときのことを考えれば、医療設備が整っている方が安心ですね。

高橋:私はビーチリゾートが好きで、海がきれいな小さな島に行くことも多いから、大抵その場所には日本のような大きな病院なんてなく、小さな診療所のようなものがあるだけだったりするんです。だから、そんな場所で重症になってしまったらどうしようもなくなるから、しばらくは行けないのかなと思っています。

山田先生:それって今回のコロナだからではなく、以前から変わらない普遍的なことだと私は思います。コロナ前でも旅先で、その国で流行っている感染症はあったと思いますし、交通事故にあってしまう可能性だってゼロではなかったはず。

高橋:そう言われてみればそうですね。

山田先生:それが心配な人はそもそもそういう場所を旅先には選びません。それに、どの国に行っても、ただこれまでは意識していなかっただけですよね。
今回のコロナウイルスが与えた大きな変化というのは、“健康のリスクを意識させた”ということ。実際、持病を持たれている方などは別ですが、多くの人にとって病気や死亡のリスク自体の上昇にはほんの少ししか影響していません。


日本人旅行者の入国受け入れを表明した国には訪れても大丈夫?

 

高橋:そうなんですね。では、一部の国が日本人の受け入れを表明し始めていますが、それはもう行っても安心ということなのでしょうか。

山田先生:いいえ。旅行者の受け入れの決定に、感染リスクは度外視されていることも多いと思います。例えば、観光業がその国にとってどれくらい大切かが基準で決められており、観光を再開するしか、国が生き残る道がないということ。だから、観光をウェルカムしていること=感染のリスクがない、ではありません。つまり、「来てもいいよ」と言っている国に行くのは個人の自由ですが、感染リスクという点で「行かない方がいい、行ってもいい」かはまた別問題ということになります。 

高橋:そういうことなんですね。いつも旅行でお世話になっている国が観光業で困っていると言われたら、旅行をして恩返ししたいと思ってしまいますが、今回のような状況では自分がウイルスを持ち込んでしまう可能性もあるし、日本にウイルスを持ち帰ってしまう可能性もあるので、その国をサポートしたいという気持ちだけでは動けませんね。

もし家族旅行をして、大人だけがコロナに感染したら、子供はどうなるの?


高橋:なるほど。では、もし日本人の受け入れを再開した国に行き、万が一新型コロナウイルスに感染をしてしまったとします。私はふだん子供と一緒に旅行しているのですが、私だけ感染して、子供は感染していなかったら、別々に引き離されてしまうものでしょうか。

山田先生:基本的には、同行動していれば濃厚接触者として扱われるため、同様に隔離が行われることになると思います。

高橋:なるほど。国によって違うかもしれませんが、このような場合、子供が小さくても別々に隔離されてしまうのでしょうか。

山田先生:検査結果次第だと思います。たとえば、親が陽性で、子供は陰性で症状もない場合。子供は感染していない可能性があるので、親から子への感染を防ぐため、別々にされます。もしふたりとも陽性の場合、区別する必要がないので、同じ部屋に入院することも可能だと思います。ですが、病院の都合で、子供は小児科の病棟、親は成人の病棟に分けられてしまうことはあります。
 

海外旅行先でマスクをしていないと罰せられる国もあるので注意


高橋:子供だけが陰性だったら、かなり辛いですね。言葉も通じない外国で親と離されてしまう子供の気持ちを思うと、いたたまれません。では、マスクをしていたら感染する確率を減らせるのでしょうか。マスクの効果って、どれくらい信じていいのでしょうか?

山田先生:信じすぎないことが大事ですね。感覚的には6割くらい減らすのかなというイメージ。ですが、マスクよりは2mのソーシャルディスタンスを取ることの方が感染予防には効果があります。

高橋:海外旅行でもソーシャルディスタンスには気をつけなければなりませんね。

山田先生:ちなみに、マスクの有効性の話ではありませんが、今は「ユニバーサルマスキング」(マスクをつけましょう)を政策的にしている国がほとんど。国によっては罰せられてしまうこともあるので、旅行する場合は事前に確認しておく必要があります。

高橋:調べてみたら、国によっては公共の交通機関に乗るときは必ずマスクをつけないといけないルールにしているところもあるんですね。
海外旅行好きとしては、ちゃんと調べもせずに、海外旅行は危なそうと決めつけてしまうのはイヤだったので、今回インタビューさせていただき、とても勉強になりました。日本と世界の状況をリサーチしながら、周りにも迷惑をかけないように気をつけながら、慎重に旅行のタイミングを見極めていきたいと思います。ありがとうございました!


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撮影・構成・文/高橋香奈子

 

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